Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

読書

社会はなぜ左と右にわかれるのか 対立を超えるための道徳心理学

ジョナサン・ハイト=著,紀伊國屋書店 すっごく面白い.カーネマン「ファスト&スロー」の内容も頭の中で引っ張り出しつつ読む. ハイトはいわゆる天才肌じゃないものの,迷いながら研究をしている様子がすご〜く良い.(文章上そう見えるだけで,本当は天…

一九八四年

ジョージ・オーウェル (著), 高橋和久 (翻訳) [新訳版],ハヤカワepi文庫 長女に「動物農場」を勧めたら,一緒に買ったらしく逆に勧められた. 異なる意見が言えない,”間違った”過去は改竄される,上に反抗するものは粛清.近未来の「ビッグ・ブラザー」が…

国を救った数学少女

ヨナス・ヨナソン=著,中村久里子=訳 西村書店 「窓から逃げた100歳老人」と同じようなペースで進んでいくハチャメチャ痛快コメディ.そんなに数学が出てこなかったが,歴史を変えた政治家たちが出てくるのは面白いね.あと,主人公のノンべコが異常なほど…

女の子は本当にピンクが好きなのか Think Pink

堀越英美=著,(株)Pヴァイン スピッツのファンクラブ会報で,草野さんが最近読んだ本として紹介していたので長女が興味を持ち,私も読んでみた. 首を100万回くらい縦に振りながら読む. ピンクはめんどくさい色である.「可愛い」「女らしい」「エロ」・…

はじめての 統計データ分析 ―ベイズ的〈ポストp値時代〉の統計学―

豊田秀樹=著,朝倉書店 こういう本を読書記録につけて良いのかよくわからないけれど,結構面白かったので. タイトルには惹かれた.ポストp値時代. p値って,感覚的に全然わからない.例えば2群(の分布)があって,平均値のところにそれぞれ縦棒が引いて…

下り坂をそろそろと下る

平田オリザ=著、講談社現代新書 というわけで、平田オリザ熱。城崎を演劇の街にしちゃった件。すごい、、、プロジェクトに参画したい。。。(違)

わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か

平田オリザ=著、講談社現代新書 コミュニケーションとは、きちんと説明すること。説明しなくても察することではない。 日本の大部分の職場ってのは、「技術は目で見て盗め」「会社の飲み会に出ないとは何事か」と多くの時間を共有することで、明確な説明が…

ニッポン沈没

斎藤美奈子=著、筑摩書房 毎度毎度,斎藤美奈子センセがたくさん読んでいて圧倒される,圧倒されまくる書評集. ヘイトスピーチの定義があるというのが衝撃で,その定義とは「マイノリティに対する攻撃」.「嫌いなものを嫌いという」ことじゃないんだって…

海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年

塩野七生=著、新潮文庫 読みたい読みたい!と呟いていたら、ボードゲームでお世話になっている仙台の友人が貸してくれた。ま、彼には「ローマ亡き後の地中海世界」を貸したから、持ちつ持たれつだが。 勃興期のローマ帝国もそうだが、こういう、ヴェネツィ…

医学探偵ジョン・スノウ―コレラとブロード・ストリートの井戸の謎

サンドラ ヘンペル (Sandra Hempel)(原著), 杉森 裕樹 (翻訳)

ツ、イ、ラ、ク

姫野カオルコ=著 恋とは、墜ちるもの、という意味でタイトルが。表現(比喩とか)、乾いた視点が独特で、読みやすい。 解説にあるように、確かに最後のお伽話的なオチが今ひとつ解せない。ここまで乾いておいて、最後にハッピーエンドはないでしょ、と思う…

打ちのめされるようなすごい本

米原万里=著、文春文庫 米原万里さんには、打ちのめされっぱなしである。本を読むたびに、居ても立ってもいられなくなる。ページから麻薬でも出てるんじゃないだろうか。 書評集だと更にである。世の中に読みたい本が未だこんなにある!なのに私は、今まで…

窓から逃げた100歳老人

ヨナス ヨナソン=著、柳瀬 尚紀 (翻訳)、西村書店 近代100年の歩みを、こういう形で描き出す手法もあるのね。 私は世界史はあまり勉強していなくて弱いのだけれど、このおじいさんは歴史を変えた要人に会いすぎ。そしてもれなくウォッカを飲み交わしている…

ガセネッタ&シモネッタ

米原万里=著、文春文庫 通訳稼業の辛さと面白さ。 「失楽園」と「トシマエン」。失楽園の映画の観客が「年増」と、スピーチする側もオモシロすぎでしょ。 「古池や蛙飛び込む水の音」この「蛙」、日本人なら大抵の人が1匹を思い浮かべる。それに対し、ドイ…

オリガ・モリソヴナの反語法

米原万里=著、集英社文庫

公害に第三者はない 宇井純セレクション2

宇井純=著、新泉社 読み直し企画。現代の環境研究に全く相容れないアプローチや思想かというと、そうでもない。宇井先生の文章を読んでいつも思うが、私たちは、公害時代に蓄積した研究アプローチから、一体何を学んできたんだろう、と恥ずかしくなることが…

原点としての水俣病 宇井純セレクション1

宇井純=著、新泉社 宇井先生の本は二十歳のころ初めて読み、それからも折に触れて。私の職業選択の指針になっているのは宇井先生の「公害原論」と、高橋裕先生の「都市と水」、米本昌平さんの「地球環境問題とは何か」。 現実を見ながら、最善の妥協をしな…

戦後行政の構造とディレンマ 予防接種行政の変遷

手塚洋輔=著、藤原書店 何を隠そう「暮しの手帖」第1世紀号(1948-1969)を暗記するほど読み込んでいた私としては、「戦後」ってめっちゃ身近。戦後行政ってだけでアガるが、どこまで歴史を遡るんだろうと手にとってみた。 予防接種行政がテーマで、「集団…

「学力」の経済学

中室牧子=著、ディスカバートゥエンティーワン 教育アドバイザーらしき仕事を受けている、夫が買ってきてたので読んでみた。とても分かりやすい。 「ランダム化比較試験」によって(有意差があることが)確かめられた結果から結論を導き出している。いやぁ…

嘘つきアーニャの真っ赤な真実

米原万里=著,角川文庫 これは・・・すごい本に出会ってしまった.ノンフィクション.心打たれまくって涙流しながら2回もじっくり読む. 斎藤美奈子の解説にも注目.私に勧めてくれたのは,なんとなんとウチの長女!斎藤美奈子つながりでこの本を読みたく…

「いのちは大切」,そして「いのちは切なし」

副題:放射能問題に潜む欺瞞をめぐる哲学的再考 一ノ瀬正樹,東京大学哲学研究室『論集』33号,pp.1-47 原文はこちら 放射能問題は専門外であろうのに,一次文献をかなりあたっていて(多分,普通の哲学の先生はそんなことしない.偏見ならすみません),い…

教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」

内田良=著,光文社新書 学校では,リスクは減らすものではなく,乗り越えるもの,という扱いだと.斬新すぎる(皮肉). 学校は感動と美談の宝庫だが,一方で強制の宝庫でもある.可能な対策としては,個人の選択の幅を広げること…なんだろうな.組体操は有…

名作うしろ読み

斎藤美奈子=著,中央公論新社 名作の最後の一文を抜き出し,なぜそのエンディングなのか,オモシロウンチク話を交えて解説する新しいタイプの文芸評論. とにかく斎藤美奈子センセが大量の読書をしていることにまずオドロキ.そしてこの本の面白いところは…

リスク(上)(下)

ピーター・バーンスタイン=著,青山護=訳,日経ビジネス人文庫

災害弱者と情報弱者 3・11後、何が見過ごされたのか

田中幹人,標葉隆馬,丸山紀一朗=著,筑摩選書 文章がうまく,とても読みやすい.しかし,正直「おもってたんとちがう」.あまり弱者に寄り添ってないというか....岩手・宮城・福島の考察もどうも現場を見てないんじゃない?というか....この著者の方々,…

キャパの十字架

沢木耕太郎=著,文藝春秋 一気に読了。面白い。ミステリーなので内容については詳しく書かないでおく。ゲルダの苗字が「タロー」なのは岡本太郎から、というところが面白かった。 21世紀になって沢木さんから少し遠ざかってたけど、相変わらずの、カッコ良…

ヒューマンエラーは裁けるか 安全で構成な文化を築くには

シドニー・デッカー=著,芳賀繁=訳,東京大学出版会 組織内での保身のために失敗事例は他所に伝えたがらないということはよくわかったけど,どうすればよいかの記述がイマイチ.

自治体再建ー原発避難と「移動する村」

今井照=著,ちくま新書 私も,実はいつも移動している.今流行りの,二地域居住である.どこに納税し,どの自治体の行政サービスを利用するか,ありがたいことに選べる身分だ.そういう人間こそ,「住所とはなにか,住民とはなにか,自治体とはなにか」突き…

捏造の科学者 STAP細胞事件

須田桃子=著,文藝春秋 本書から新たに得た情報は少なかった.しかし真相解明とは言わないにせよ,小保方氏の立場はすごくわかった.何一つ悪意がない(だから無罪だ),は本当なの?と思っていたけど,やりとりを公開してもらって,そりゃそうだ,悪意はな…

育休世代のジレンマ

中野円佳=著,光文社新書 私は育休世代というには年いってるが,共感しすぎて言葉が出ない. 出産すると責任ある仕事を任せてもらえない・・・構造的にもそうだし,母親側も「短時間勤務でそんなおこがましいこと言い出せません」みたいな負い目がある.こ…