Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

時代革命

キウィ・チョウ=監督、2021年香港(ドキュメンタリー)
出演者のクレジットは「香港人」。
東京渋谷のユーロスペースにて。不便な時間帯だったのに、7割の客の入り。このドキュメンタリーは、香港では上映できない。代わりに日本で、自分の目でしっかりと観ておきたい、そういう人が多いのかも。
異例なことに、冒頭で「ニックネームでの出演」「モザイクをかけること」「(ニックネームでも身元がバレると命に関わる可能性があるなどで)出演の許可が得られなかった場合は俳優が代演すること」をお許しください、と断りが入った。この時点で相当な緊張感が走る。
光復香港 時代革命
私の愛した香港がこんな事になっていたとはー!と、心配な気持ちで見守ることしかできない。そんな自分をたいへん不甲斐なく思いながら鑑賞。
個人的な話だが2019年5月にトランジットで香港國際機場に降り立った。その翌月から数ヶ月後にこんな攻防が起こっていたとは、到底信じがたい。デモという古典的な戦い方だから「日大闘争」と基本は変わらない。映しだされる像も変わらない。揺れる画像、煙と水、目に優しい映像では決してなかった。ただし、デモ参加の最前線に女性や10代(中高生)がいたこと、救護班にも取材していたことは、60年代とは大きく異なっていた。もちろん、SNSでの発信、マップアプリの活用で作戦をブラッシュアップしていくなど、デジタルな手段が鍵となるのも今どきだ。
若者たちの行動や闘志は日大闘争と同じかもしれないが、老人たち(陳じいさん・・・)の声で顔で涙で、ひたすら泣けた。そして、映画の後半になるにつれ、大学教授などの解説コメントが増えていく編集になっていて、不気味さを感じた。
香港中文大学のデモでは引き分け、しかし香港理工大でのバリ封がまさかの大敗。戦いだから勝ち負けあるが、やはりショックだった。民主派は勝つと、どこかで信じていたかったから。傷心のまま台湾に一時避難するリーダー級の若者たち。カナダに脱出した人もいる。それでも、愛する香港を守るためにまた戻ってくる人も。希望があるか、分からない。でも。。。
2021年に法律が改正され、香港議会の代議員たちの選び方も変わったようだ。私の方に知識がなく、映画を見ながら混乱していたが、2019年時点では「民主派」代議員もいて、デモを応援する方々もいた、という理解で良いはず。今は中国本土の選挙委員が代議員を選んでいると聞いた、民主主義とは何なのだろうか。「普通選挙で、リーダーを自ら選べるようにして欲しい、ただそれだけ」と誰かがインタビューで語ったと記憶している。日本は、普通選挙でリーダーを選べるのに、何なんだろうな、と恥ずかしくなった。
最後に言葉のこと。この映画に出てくる人皆、北京語じゃなくて広東語を喋っていて胸が熱くなった。2019年の機場では全て北京語だったから、あー、返還から20年経つと香港もそうなっちゃうのかと残念だったのだが、それは表面的で、民衆はまだまだ広東語なのだと。自治には、独自の言葉が必要だよね。香港人から広東語を奪うと、途端に香港人アイデンティティが抜き取られてしまう、そう感じたのは私だけだろうか。加油香港!