Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

海街diary

是枝裕和=監督,2015年日本(東宝ギャガ・コミュニケーションズ
ようやく観ることができた.四姉妹ものは大好きなジャンルで,小さい頃は「若草物語」に憧れ,20代は「細雪」を舐めるように読み,30代で「阿修羅のごとく」にエネルギーを費やした(NHK版も映画も向田邦子の原作(台本)もチェック済み.いずれも秀逸),そういう者にとって本作を観るのは基本中の基本.平成が舞台になると四姉妹も腹違いになって少し複雑だが,それはそれ.吉田秋生さんの原作も読んで一話ごとに泣いたので,是枝さんの映画ならどうかな?と思って,でもあまり期待せずに観た.
正直なことを言うと,尺の制約がある分だけ映画には不利.なので,原作のほうが良かったなあと思う.が,美人って正義(!?)なのか,女優4人を見ているだけで,穏やかでほっこり,幸せな時間だった.
成瀬巳喜男の映画が大好きで,是枝さんの映画もそれっぽいなあ(特に女性の描き方が妙にリアルなところ),と思っていたが,今回は小津の「東京物語」に似ていた.
海辺の階段で綾瀬はるか堤真一が二人で話す場面は,もう「東京物語」の東山千榮子と笠智衆そのもの.このアングルで,この光で撮るのか・・・
家の中も,昭和の古い家そのままで,下から座卓やコタツを撮るアングルが小津.まあ,日本らしさが最も出るアングルなのかもしれないね.
広瀬すずちゃんは思ったより野性的で,美人という形容詞は少し違うと思ったけど,やっぱり可愛くて素敵だった.うちの次女のテイストがこういう感じなので,是非こんな女子になってくれないかな(親から判断して,無理です!!).
若い4人の女優たちがまだまだだな,と思えたのはあくまでも相対的なもので,樹木希林風吹ジュンが上手すぎたからだと思う.樹木希林は是枝組の常連で「奇跡」も「そして父になる」もそうだったけど,リアリティありすぎて主役を食ってたもんね.風吹ジュンも素晴らしく,こんなふうに年を取るっていいなと思う.全くの偶然だけどNHK版の「阿修羅のごとく」で四女を演じたのが若かりし頃の風吹.これも忘れられない名演だった.
とにかく,女優を撮らせるんなら是枝さんですなぁ.