Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

家路

久保田直=監督,2014年日本(『家路』製作委員会,ビターズ・エンド)
予備知識なく,機内で観た.オープニングでなんとなく,是枝裕和監督かな,と思ったら違った.
原発事故で,米を作り牛を飼っていた農家が仮設住宅にて暮らしている.
私は仮設住宅を見たことがないけれど,その生活がどういうものかハッキリ分かった.特に俯瞰アングルが何度か出てきて間取りとともにその窮屈な感じがよく分かる.2DKといっても,各部屋の仕切がふすまでなくてカーテンで,隣の部屋でテレビを観ていたら音が丸聞こえなのだ,とかね.仮設住宅は外観がどの家も同じだから,自分の家にたどり着けなくて迷ってしまうのは,田中裕子演じる主人公の母親.まだらボケが入ってなくても,私でも自分ちを見失うと思ったよ!(そう.この映画は「失う」「見失う」という喪失感が全体によく出ていた.)
そして,松山ケンイチが隠れて住んでいる計画的避難区域(多分,昼は入れるけど,夜間宿泊ができないところなのだ)にある元の家のだだっ広いこと!しかし人が住んでない家の「過去の遺物」感がすごい.放射能汚染に絶望し自ら死を選んだ農家の仲間もでてくる.これが反原発の映画でなくて何なんだろう.
小野新町駅磐越東線)が出てくるから設定は川内村なのかな.松ケンが,水の入手には不便なところを人力で耕して田にしていて.よくやるなあ,松ケンみたいに若くないとできないなあ,流石にもうちょっと水が得やすいところにしたらいいのに,とかいろいろ思ったけど,「稲の生産をこっそり再開する」がコンセプトなので,あまり目立つところではできないのかもね.