Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

原子炉事故のリスク評価 in 1960

今日は仕事関係で用があり,過去のはてなブックマークを見返していた.そうしたら,数年前にクリップした情報の中に↓の記事を発見したので取り急ぎ紹介〜〜〜.(当時は切羽詰っていて,いろんなリスク評価書を見つけても読む暇なかったのでうっちゃってあった)
大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害額に関する試算

福島原発問題が起きたあとに見るとひたすら味わい深い.一見に価する報告書だ.
しかも,なにがすごいって,1960年にこういうリスク評価が日本で行われていた,ということ.1960年って,昭和35年,まだ高度経済成長期の前夜だよ.東海村の原子炉の建設が始まった頃だ.
この報告書も,東海村の原子炉をケーススタディーとして取り上げたようだ.
ざっと目次を見ただけで内容をじっくり追ったわけではないけれど,当時の米国の方法を踏襲したとはいえリスク評価の手順は我々がやっているのとほとんど同じなのも驚いた.一体どんな人がこの報告書を書いたか興味あるところ.大気拡散モデルを吟味していたり,臓器の感受性を考慮して等価係数を使ったり,というのも同じ.そして,至る所に「これは推定に基づく」とかディフェンスする文言が入っているけれど,
「土地よりの立退基準及び住居制限」
「人体の障害の評価」
「放出放射能の農漁業への影響」
など,結論をしっかり数字で出している!潔い感じ!
単位がキュリーとかラドなので数字の妥当性は追えてない.私の力不足です,はい.
最後のほうにある損害賠償額の表も,「戦後の著名な集団災害における慰謝金」と比較していたりして秀逸.

以上の数値は大部分推量である。出来るだけ既存のデーターを参考にしたが、これはあく迄も、災害評価のために引いたラインであると考えていただきたい。

とか,今だって専門家は同じことを言っているような気がする・・・もしかすると,この分野って数十年進歩してない?! 汗)
思わず我が身を振り返ってしまった.心して仕事します,逃げないで立ち向かいますので許してください(誰に言ってんだか).
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この報告書をWEBにアップしてくださったのは原田裕史さんという方.膨大な量の本文をタイプしてくださり,ありがとうございます.この場をお借りしてお礼を申し上げます.