Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

EUの化学物質規制の根拠文書を読んでみたのでメモ

恥ずかしながら,化学物質規制の根拠文書,Restriction Reportは初めて読んだ.
表紙には
ANNEX XV RESTRICTION REPORT
PROPOSAL FOR A RESTRICTION
SUBSTANCE NAME:○○
とある.たとえば1,4-dichlorobenzene(パラジクロロベンゼン)なら以下のURL(知らないと見つけにくい!).
http://echa.europa.eu/documents/10162/3f467af2-66e0-468d-8366-f650f63e27d7
この文書の場合,作成者は欧州化学品庁(ECHA)である.はっきりと「規制の提案」とあり,こういう官庁がこういう提案をするのがEUらしい.(ちなみに,最初誤解していたのだけれど,RESTRICTION REPORTを出しているのはECHAだけではない.restrictionを推進したいと思っている組織が自主的に発行するらしい,たとえばUKなどという国単位から,官庁,大学まで.個人ではさすがにないみたいだけど).ANNEX,とはREACHのアネックスだと思う.
パラジクロロベンゼンの内容は
・規制対象は室内芳香剤とトイレボール(いずれも消費者製品)
・有害性プロファイルのまとめ
・Consexpoで室内濃度算出.ただし,シナリオはかなりざっくり(まだちゃんと見ていない).
・リスク評価のスキームはREACHとほぼ同様
・欧州全体で何人がDNEL(derived no effect level 導出無影響量)を超えるか(9万人とかいう数字が並んでいる)
・経済性評価.要するに代わりの役割をするものがリーズナブルな値段で手に入るか.
・代替することの正当性の説明.(パラジクロロベンゼンの場合は,代替ありきの論調に思えなくもない)

代替物質については,カンファーとかクエン酸とかいろんな物質が挙がっているが,MOEを算出するといったリスク評価はしていない(コスト算出はしている).ADIのような判断基準となる数字がないからと思われる(要確認).トレードオフの評価を一部,規制影響の評価を一部という緩い評価だが,文書の章立て(含むべきコンテンツと必要とされる精度)については参考になる.REACHの評価ツールがあると,こういうこともできるのね.

(個人的なメモ)
この「規制の提案」文書は「消費者製品に意図的に含まれる鉛及びその化合物」ってのもあって,こちらも読むこと.というか,EUでは今まで規制されていなかったのか?
日本の場合,消費者製品中の鉛は業界の自主規制で低減の一途と予想される一方,小児の鉛暴露はハウスダスト由来が半分以上という.このギャップは訝しい.原因を整理したい.