Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

愛情萬歳

ツァイ・ミンリャン蔡明亮)=監督、1994年台湾
1980-90年代の台湾映画は、香港映画とも中国映画とも異なる魅力があって、機会あれば劇場で鑑賞するようにしている。
蔡明亮監督のは初めて。不思議な作品で緊張感があって結構面白かった。台詞が全然ない。主人公たちの名前がわからない。背景の説明が極端に少ない。
最初、作品の意図がわからなさすぎて、幽霊が出てくるミステリーかと思ったが、王家衛テイストの「台北ストーリー」とみなして、この映像を浴びていくと面白くなってきた。この作品を20代の私が観たら、何一つ面白いと思わなかっただろうな。今観て良かった。
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ロッカー式共同墓地のセールスマンのシャオカン(リー・カンション)は、高級マンションに届け物をした際、同じフロアの部屋に鍵がささったままのドアを見つけ、その鍵を抜き去ってしまう。再びマンションを訪れた彼は、人気がないことを確認し、部屋に忍び込む。意を決してナイフで自殺を図ろうとするが、踏み切れない。そこへ不動産エージェントのメイ(ヤン・クイメイ)と露天商のアーロン(チェン・チャオロン)がやって来る。この部屋はメイの仲介物件の一つで、彼女は夜の街でゆきずりで出会ったアーロンを引き入れたのだった。服を脱ぎ、絡み合う2人をそっと覗き込むシャオカン。人見知りが激しく、会社でも仲間と打ち解けないシャオカンは、パンフレットをマンションのポストに投函するだけの単調な日々を送っている。彼はいつしかこのマンションで安らいだ時間を過ごすようになる。アーロンも合鍵を使ってこの部屋にやってくる。不景気で物件が売れないメイも疲れた体を癒すように、時々この部屋を訪れる。ある日、男二人は部屋で鉢合わせをする。最初は互いに警戒しあっていた彼らだが、やがてドライブをしたり一緒に鍋をつつくような仲になる。アーロンはメイに電話するが、彼女は相手が誰なのか分からない。ある晩、メイに気づいたアーロンは、シャオカンを残して後を追う。待ちぼうけを食わされた彼が一人ベッドの上で自慰行為をしていると、彼らが帰ってきた。ベッドの下に隠れたシャオカンに、やがて軋む音と喘ぎ声が聞こえてきた。翌朝、メイが造成中の公園の中を歩いている。彼女はベンチに座るなり、いつまでも嗚咽するのだった。
(映画.comより拝借)

台北に暮らす若者3人、疲れて孤独なのはわかった。全員何かあるとタバコを吸うのは、時代か?出会いの場となるのはスタイリッシュなマンションで、メゾネットタイプ。何部屋あるのか結局わからなかった。お風呂のシーンが多め。男は二人とも頭まで浸かる。女は湯船でタバコを吸う。ジェットバスを洗濯機にしてしまうところ、好き。思わず笑った。
自殺に使った(未遂だったけど)マウンテンナイフが、スイカに穴を開ける小道具として使われ、そのスイカがボーリングのボールと化す設定、これも笑った。女が風呂上がりに肌の手入れをするシーンが描かれているのも驚きだし、女が便器に座っているシーン(多分きちんと排便している)も、初めて見たような。だからといって、この映画が世界的な映画祭で受賞するのも、なんだかなあ、という気持ちはあるが。
94年なのに携帯電話(まだ自動車電話くらいの大きさだが)が出てきたのには驚いた。1990年代前半の台北。Non-noほか日本語の雑誌が何種類かコンビニに置いてある。お墓を買う台北の富裕層(高齢者)の様子も、興味深く見た。