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タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

ヤンヤン 夏の想い出

エドワード・ヤン楊徳昌)=監督、1999年台湾
原題:Yi Yi: A One and a Two
呉念真(ウー・ニエンチェン)、金燕玲(エレイン・ジン)、張洋洋(ジョナサン・チャン)、李凱莉(ケリー・リー)、イッセー尾形

これは!!傑作!!
まず登場人物が全員ゴタゴタしていて、覗き見感満載なのが良い。なのにリアルなのか夢なのか時々わからなくなる。登場人物の関係を理解するのに時間がかかり、それぞれのエピソードが濃くて情報量が多いため、背景の整理が不可欠。
背景:
主人公、ヤンヤンは両親と姉、祖母の5人家族。何不自由のない台北中流家庭の話と思いきや、祖母が脳梗塞でごみ捨て場にて倒れているところを発見されてから、家族全員の歯車が狂い始める。(その狂い方が、リアルなのか夢なのか、うまく描かれていて最高!)
人物説明:
母:祖母が倒れてから新興宗教にハマってしまい、山籠もりしてしまったため家は留守がちに。教祖が自宅に来たり。どういう宗教なんですか?!
父(NJ):真面目そうでいて、義弟(アディ)の結婚式で、高校の同級生かつ初恋の女性、シェリーに会い、熱が再燃。要するに浮気だが、逢瀬がなんと日本旅行。熱海つるやホテル、東京ホテルオークラが大層美しく描かれる・・・。
姉ティンティン:ごく普通の高校生。名門女子高に通う。アパートの隣の部屋に越してきたリーリー(音楽高校に通い、チェロを習っている女子高生)と仲良くなる。ところが、リーリーは英語教師と付き合っていて、それだけならまだしも、その英語教師はリーリーの母とも関係を持つ。リーリーは恋愛体質なのか、別に彼氏(大学生?)がいる。彼氏と、リーリーとティンティンの構図もまた良き。この彼氏とリーリーが最終的には恋愛関係になるが、意外な終わり方。意外な、悲劇的な終わり方はエドワード・ヤンの好みなのかも。
ヤンヤン:8歳の小学生。同級生の女子は一回りも二回りも背が高くて大人。なので女子からはイジられてばかりいる。趣味はカメラ。大人の後頭部ばかり撮り、現像しては本人にプレゼントするのを趣味にしている。そのアングルのセンスのよいことよ。「前を見ているだけでは真実の半分しかわからない」。そんなヤンヤンも、クラスのリーダー格の水泳少女に恋をするのだ(笑)。
アディ:ヤンヤンの叔父さん。投資失敗でカッコ悪いうえに、「いやな女」とできちゃった婚で、親族全員(?)からの鼻つまみ者という立ち位置。特におばあちゃんに結婚を反対される。なのに本人は妙に自信満々。
大田(イッセー尾形):父NJの事業パートナー、助言者。でも怪しくて、占い師みたいに見えた。東京でNJと会うが、その居酒屋で店の人からトランプを借りて手品を披露するのが面白い。店の人からは「賭博はNGですよ」みたいなことを言われる(そこ?!)。

さて、ここまででお腹いっぱい感はあるが、これらのエピソードが、無駄な感動を排し淡々と描かれている。
1)フィルム全体の色調
コメディとしてなのか、芸術作品としてなのか。スクリーンが青緑で、暗闇も雷雨も、美しすぎてずっと見ていられる。
2)台北と東京の風景
1999年の作品なのだが、1980年代かと思った。台北がノスタルジックなんだね。ちなみに、私が台北に行ったのは1999年10月。当時の東京も、懐かしくて思わず見入ってしまう。
3)台湾の中流家庭の生活
祖母を覚醒させようと、家族や親族全員で声掛けをする「耳は聴こえてるから」。ティンティンはピアノを弾くが、ヤンヤンは「自分でできることは何もないから」と拒否る。8歳なのによく考えている。祖母の葬儀の日、ヤンヤンが祖母へのメッセージ作文を読み上げる。やっとかよ!生きてるうちに読めよ!と思うものの、その内容があまり感動的じゃないところも味があって好感を持った。