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タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

カドミウム米も焼却処分

朝日新聞の記事より.2008年10月14日11時9分

カドミウム米も焼却処分 農水相事故米と同様に処理」

事故米の不正転売問題にからみ、農林水産省は14日、現在、農家から買い上げて工業用に売却している有害重金属のカドミウムを含む米についても売却を中止し、焼却処分していくことを明らかにした。

 石破農水相が14日の閣議後会見で、カドミウム米について「国民の衛生に懸念なしとしないものは、事故米と同様の処理をする」と述べた。

 鉱山の廃液などに含まれるカドミウムは人体に蓄積されやすく、富山県ではイタイイタイ病を引き起こした。カドミウム食品衛生法の残留基準値は1ppmで、農水省は1ppm以上の米は廃棄とする一方、農家の保護と消費者の不安解消のため、0.4ppm以上1ppm未満の米は国費で買い上げ、着色したうえで、工業用として売却してきた。

 毎年、新たに生じるカドミウム米は04年度から国に代わり社団法人・全国米麦改良協会が国の補助で買い上げ、07年度は4億円で2400トン(1トン当たり約17万円)が購入された。政府が保有するカドミウム米の在庫も6千トンあり、これらがすべて廃棄処分とされる。農家からの買い上げは今年度内は続ける。焼却処分には1トン1万円前後の焼却費と運送費がかかるという。

 現在、農水省は合板メーカー2社と道路の敷石メーカー1社に販売。合板メーカー2社は販売を中止しても業務に支障ないとし、敷石メーカーにはカドミウム米に代わって政府保有の輸入米を売却する。(歌野清一郎)

ああ,ついに,というか何と言うか.
食べ物を(たとえ食用には不適当だとしても)税金を使って焼却するって言うのは,なんか無神経だなあ,それが食料の適正な流通をつかさどる官庁のやることだろうか?と思った.
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さらに,「国民の衛生に懸念なしとしないもの」という定義がはっきりしていない.こういう言葉が独り歩きする(拡大解釈される)ことは本当に困る.
たとえば「国民の衛生に懸念なしとしないもの」が仮に「カドミウム濃度が0.4ppm以上の米」だとすると,厳密に言えば全てのロットの米について濃度を測定しなければいけなくなる,なぜならカドミウム全く含まない米は存在しない(←ここ,小麦でも大豆でも同じ)から.濃度がわからないと「懸念なし」かどうか判断できないということでしょ?そうしたら,流通に支障が出まくり,少なくとも新米をすぐには食べられなくなる.
「国民の衛生に懸念なしとしないもの」が「水銀やアフラトキシンがある濃度以上含まれそうな食品」だとすると,「マグロやピーナッツは,(水銀やアフラトキシンの含有濃度がどんなに低くても)全量焼却」っていうことになってもおかしくはない.「〜がある濃度以上含まれている食品」とすれば,ここでもまた全量調査だ.
有害な化学物質が全く含まれていない農・水産物は存在しないし,だからこそうまく付き合っていくことが一番大事なのに...
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ということで,今回の決断は国民の教育には最もよくない措置だと考える.今回,農水省はどうしてこういう措置に出たか?
1.国民の信頼を勝ち得るためには過剰反応気味といわれてもこういう手段をとらざるを得なかった.
という一番まっとうな理由に加えて本当は,
2.最善手を考える気力体力がなく,思考停止.「例外なく全量○○する」って決めてしまえば楽だからね.
3.実はカドミウム汚染米も方々に頭を下げて無理やり引き取ってもらっている状況で,在庫は膨れ上がってるし,ここらで厄介払いできるなら渡りに船と思った.
ってところでしょうか.もしかしたら,カドミウム汚染米も過去に不正流出&食用に転売という後ろめたいことがあり(公にはなっていないけど),先手を打つ意味もあったのか?などと黒い私は勘ぐってしまったけど.