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タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

アフラトキシン「検出されてはならない」について

食品中の濃度の基準値欄に「検出されてはならない」とあると,最強の猛毒!とビビッてしまうが,実はこれの意味ってあいまいである.どんな精密な分析をしても検出されてはならないのか?と突っ込むべきところだからだ.たとえば,ヒトの手にはたくさんの細菌がいるのだけど,肉眼で見て「見えませんでした」=ナシ,なんていう議論があまり意味を成さないように.

ということで,「検出されてはならない」に付帯している条件について.

アフラトキシンに関しては,基準値欄に「検出されてはならない」とあるのを見るが,実際は10ppbがすそきりライン.一見矛盾しているように見えるので,これらの関係はどうなっているかサーベイ

東京都健康安全研究センターの消費者向け解説ページによれば,

食品衛生法により、アフラトキシンB1は食品から検出されてはならないとされています。厚生労働省の通知によるアフラトキシンB1試験法の検出限度である10ppbが規制値となっています。

なるほど,指定の試験法で検出されない,ということを言っているだけ.ということで疑問は解決.

厚生労働省の通知はこちら.「カビ毒(アフラトキシン)を含有する食品の取り扱いについて(食監発第0326001号)」
分析はHPLC

***以下はほとんどオマケ.

(でも面白いことに,)先ほどの東京都健康安全研究センターの専門家用ページには10ppb以下でも検出例が載っている(当たり前か.分析機器の精度を上げればいいのだから).
ここで一言.発がん性物質で,摂取量の増加が微量だとしても発がんリスクが増加するということであれば,10ppb以下の検出値についても情報を広く開示するべきと思うが?

東京都の分析スペックの場合,最小の検出下限値は0.1ppbと推察される.によれば,ピーナッツで全サンプルの7%強(35/459)が0.1ppb以上のアフラトキシンを含むということなのだから,どんな濃度分布をしているか知らないがピーナッツを食べている限り,アフラトキシンを全く食べないということはありえない!ということは簡単に想像がつく.東京都のデータは,「汚染が疑われる」サンプルを調べたものではない.普通に市場に流通しているものなのだ.(もちろん高濃度のものを野放しで流通させるのは問題で,きちんと監視をしなければならないと思う.それは品質管理担当者の倫理の問題であり,健康被害とは分けて議論すべきであろう.一連の報道では,このように問題のすり替えが起こりやすい/起こっているところに注意)

以上のように考えると,メタミドホスはもちろん,アフラトキシンでも大騒ぎしすぎだなあと萎えてくる.もっと大事なことに議論のエネルギーを使おうよ,という感じだ.