Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

愛の不時着(韓国ドラマ)

これは、、、かなり斬新な、これまでにない設定の韓国ドラマだった。前評判を聞いた時からハマりそうな予感がしたが、案の定、見事にハマる。

  • 主な登場人物の4人。

ユン・セリ(ソン・イェジン):韓国の財閥令嬢。自ら興した会社、セリズチョイス代表。自社製品(スポーツ部門)の商品テストのため自らパラグライダーに乗ったが、竜巻に巻き込まれて北朝鮮の非武装地帯に不時着。最初は韓国に帰ろうと様々な手を尽くすも、なかなかうまくいかない。助けてくれた北朝鮮の軍人リ・ジョンヒョクに次第に惹かれていく。

リ・ジョンヒョク(ヒョンビン):非武装地帯に勤務する北朝鮮のエリート軍人。職位は中隊長。不時着したセリを助ける。過去の経験から人を愛さないようになっていたが、自分の欲望や感情にまっすぐで勇敢なセリに次第に惹かれていく。実は総政治局長の息子。その身分を隠して前線勤務の理由とは?地雷の専門家。セリに“母胎ソロ”(母親以外の女性を知らない=恋愛経験なし)と言われる。

ク・スンジュン(キム・ジョンヒョン):韓国の青年実業家、詐欺師の一面も。

ソ・ダン(ソ・ジへ):リ・ジョンヒョクの婚約者。チェロを演奏する音楽家で、自立した北朝鮮の女性。美貌という点ではユン・セリより上かも。酒癖が実は悪く、ありえないくらいドS。

後ろの二人は、陰と陽でいえば陰なのだが、こちらのカップルのほうが真実味があふれている、ような気がする。

  • 主人公(男)にやられる(韓流ドラマでは9年ぶり2回目)。

私は韓流ドラマではあまり男の人を素敵だと思ったことがない。例外的に「パリの恋人」のパク・シニャンのみ。しかししかし・・・見終わった今、見事にヒョンビンロス。
ヒョンビン様が精悍・端正すぎてもう、美しすぎてもう、言葉にならない。私好みが全部一遍にやってきて、どこから好きを表現していいかわからない。
目と口の僅かな動きだけで感情を表現する、そこにやられまくり。顔だちも、無駄な線がなくてミニマム。後半は愛する人を守れなくて泣いて目がウルウルで、そこにもやられまくり。
実は、ヒョンビン様、オードリーの春日さんとも似ていると思う。春日さんの線をもっと細くして。そして前の松本幸四郎(現・白鸚)のような深みのある目線。幸四郎、小学生の時から好きで、ここもジャストミート。
ヒョンビン様自体も素晴らしかったけど、役との相性も抜群だった。北朝鮮の軍人役で、ワイルドな戦いと、平時の穏やかさを両立できる演技力だから、ここまでハマったのかもしれない。主人公の、愛する人の守り方はウォン・カーウァイの「いますぐ抱きしめたい」のアンディ・ラウの戦い方みたいで、めっちゃ私好み。戦っている時と、安心して女のもとで過ごしている時のギャップ。そこがよい。

第5中隊隊員たち。
ピョ・チス(ヤン・ギョンウォン):曹長。口が悪いがセリの一番の友達で性格は優しい。
パク・グァンボム(イ・シニョン):口数少ないが腕は確か。とにかくイケメン。個人的にはヒョンビンよりイケメンだと思う。案の定、ソウルではスカウトされまくり(笑)。
キム・ジュモク(ユ・スビン):韓流LOVE。とくにチェ・ジウが大好き。韓国に来た時、通訳と解説役になっているのが面白い。
クム・ウンドン(タン・ジュンサン):中隊の「末っ子」わずか17歳。母の手紙で泣くほど。オンラインゲームの才能が!

村の官舎に住む軍人夫人たち。典型的な北朝鮮のオバサン。どこの国もオカンは強い。勇敢で、時に小さな嘘と機転で守りたい人を救う。情報収集能力の高さは言うまでもなく。ダラビー(干しダラをつまみにビールで飲み会)、これは美味そうだった。あと、村の質屋が意外に重要だったり、子供たちもいい味出したりで、北朝鮮編はずっとずっと見ていたかった。
オンマたち。ソ・ダンの母、リ・ジョンヒョクの母、ユン・セリの母。国も立場も違っても皆、子を愛し心からの幸せを願う。涙涙で、こういうところが一番泣けた。
セリの仕事上での応援団も、よかった。ホン広報チーム長と、保険屋のパク・スチャン。韓国でセリの帰還を本気で心配してくれた。これも泣けて泣けて。ホン広報チーム長が録音されたセリの声を聴いて「蕁麻疹が出た!これは本物だ!」って言うシーンが爆笑。どんだけセリにこき使われてたんだー!

イケメンかつ仕事のできる軍人さん、リ・ジョンヒョクの魅力は言うまでもない。テコンドーなどの武道、銃の扱いなどアクションもキレッキレ。おまけに自らバイクを整備しスプリングを2本に改造、技術部門から「山でレースにでも出るんですか?」と聞かれてしまう。セリを空港まで送っていくのは部下のパク・グァンボム。あれ?ジョンヒョク冷たくない?と思ったけど、見つからないようにこっそり例のバイクでついて行って、セリが殺害されそうになったらなんと銃撃戦の応酬。ぎゃわーっす、このかっこよさは想像の斜め上。バイクでやってきた王子様に完全にハートを奪われました。。。。
ジョンヒョクはセリのことを「ユン・セリ」と呼び捨て。軍人さんらしく、この物言いが似合う。(セリは「リ・ジョンヒョクシ」と敬称をつける。この差もたまらないが。)なによりジョンヒョクの感情を抑えたミニマムなやり取りにハートをもぎ取られっぱなし。心の中は熱いのに・・・。
ジョンヒョクはセリのために料理を作る(麺も手作り!)。コーヒー豆を市場から苦労して調達して、焙煎して乳鉢で曳いて、二日酔いのセリにエスプレッソを。シャンプーもリンスもアロマキャンドルも市場で調達してくるこの健気さよ。究極のハイスペック男子。でもツンデレとは違う。一瞬たりともデレっとしない。新鮮ですよこのヒーロー。
一方で、セリがほかの男性を少しでも褒めると、途端に不機嫌になりやきもちを焼く、中学生か!というリアクションも最高だった。ソウルの病室では自分だけセリとハグして、部下には握手しか許さない。これ、明らかにおかしい(笑)。病身のセリの看護もかいがいしすぎて、まるでオカンだったのが笑えた。
ちなみに、ヒョンビン様の見た目が一番かっこよかったのは、非武装地帯での戦闘服(迷彩服)。二番目はソウルに行ってからのスーツ姿(チェックのワイシャツ)。ソウルに行ってからもワイシャツネクタイはお好みではないようで、タートルネック愛用なのは着慣れているからなのでしょうか?軍人っぽくてよかった。髪型もセットしたものより、前髪ぱっつんの迷彩服の時のが一番よかった。

ジョンヒョクとセリはどんなときもお互いの無事と健康を第一に想いあう仲。ラブストーリーというより体育会系だったので、最後まで白々しくなく見られたのは大きかった。いざという時は体を張って命を救う。セリはジョンヒョクの命を3回も救っている!この勇敢さ、誰かを守る強さ。レベルは違うけど、私もこの意気で生きていきたい。
gdgdの甘い恋愛とか、難病とか、記憶喪失とかが、私は好きじゃなくてそれが理由で韓流ドラマをあまり見ていなかったのだけど、今回はそれが一切なくてよかった。

  • ストーリーは2つの大きな軸

北朝鮮の総政治局長の長男が謎の事故死。徐々に明かされていく真相と復讐の過程。数々の伏線が見逃せない。
・韓国の財閥、ユン家の確執。これも徐々に明らかに。ク・スンジュンが絡んでいる。情報量が多くてこっちも見逃せない。
これにユン・セリの北朝鮮不時着がたまたま重なったことで、話が急にややこしくなった、という整理。しかし、上記2点には共通する人物が多すぎる。その辺が不自然なんだけど、おとぎ話としては大変に面白いし、こうだったらいいなということが全部盛り込まれていて、その割には論理が破綻してない。この脚本の手腕はほんと、すごいなと思った。

  • 言葉

韓国語はやっぱり面白い。
祝賀は「チュッカ」日本語から想像できる。
ジャガイモは「カムジャ」、北朝鮮の庶民の貴重な食糧。
北の人たちは、韓国を「南朝鮮」ナムチョソンと呼ぶのに対し、南の人たちは、北朝鮮を「北韓」プッカンと呼ぶ。これもなるほどと思った。村のオンマたちは韓国製品のことを「南町の・・・」、いやぁ、面白いね。
リ・ジョンヒョクさんの名字のハングルは北朝鮮式に、「리」と書くことを知る。私は이だと思ってたから「どうしてTwo-Leeカップルというのか?」と不思議だったんだけど。こんなメジャーな苗字も北と南ではつづりが違うのかー!ちなみにユン・セリのリは「리」ね。

初めて触れる情報ばっかりで本当に興味深かった。軍のシステムも。
農村部の生活。村の子供たちが「だるまさんがころんだ」をしている。自転車で発電してTVを見る(私が1997年、バングラデシュに行った時と同じだ!)。
「ケソン(開城)まで」と夜中にヒッチハイクしていた女性は「長距離運搬」業(字幕では疾走業)。韓国の物資を密輸まがいで運んできている(事件を目撃したので殺されるんだけど)。
北朝鮮って、本当か確かめようもないけど、ある日突然誰かに連行される、のが日常でよくあるとしたら、本当におっかない国だと思った。理由がわからない点も怖いけど、連行するのが保衛局(秘密警察)か、権力者が私的に雇ったヤクザなのか、相手がわからない点も、かなり怖かった。

平壌はビジネスマンがスマホ持っている。地方(農村)と首都は大違い。平壌のシーンで流れるテーマソングもそれらしくて好きだった。
平壌ホテル。ホテルの部屋には基本的に盗聴器が仕掛けられている。初めに外すジョンヒョク。それから大事な話をする。
車のナンバー(7-29XXXは高級幹部)で優先的に車線確保、信号もすべて赤から青に変えてもらえる。スピード出してOK。信号交換は人力。交通整理も女性が立っている。ジョンヒョクが乗っていた車両はジャガー

北朝鮮の列車の旅。実際のロケはモンゴルの風景(駅、列車も)のようだ。平壌駅もモンゴルの駅らしいが、雰囲気は元々似ているとか。開城ー平壌は所要時間5時間?それが停電で17時間、、、車では2時間なのに、というセリフがあり。停電も10時間って。夜は列車の中より外の草原に出て焚火するほうがあったかい(食料を売る売り子たちが、どこからともなく湧き出てくるし)。そのシーンの二人ももちろん素敵だった。その列車の別車両にク・スンジュンも乗っているのは、ちょっとないわーと思ったけど。

盗聴器が非常に重要なアイテム。倫理的にはどうかと思うが、ジョンヒョクの官舎での会話は全部聞かれている。スパイ行為と全く関係ない話でも愚直に図解をするキッテギ(耳野郎)。お仕事とはいえ大変だ(笑)。ソウルのセリの病室でも盗聴器が大活躍。セリの母の独白、次男夫妻の悪だくみも耳野郎、チョン・マンボクの機転によって全て録音されている。ここがドラマの重要ポイントになっていて、その巧みな脚本に脱帽した。

開城ーソウルは立派な道路が。これ、本当にあるのね。工業特区だったからだそうだが、今は交易がないようだ。

  • ソウル

江南区チョンダム(清潭)洞:セリの住む街区。高額所得者が多い。日本の六本木ヒルズみたいなもんだけど、六本木よりかなり小さいような。
16車線、というセリフが出てくる。私は片側8車線しか見たことないけど、、16車線って、8×2なのかな。
韓国では、初雪が降ると好きな人に連絡をする。恋人同士は集まって雪を見る。
「ラーメン食べる?」とは誰にでも言わない、これの社会的な意味は?→夜遅くまでデートした後に「ラーメン食べる?」は、「今夜は帰りたくない」を遠まわしに伝えるのだそうで、、、(照)。
ユン会長は病院の理事長も兼ねる?セリの治療も最高レベルのものを。財閥のトップって何でも出来すぎて怖い。

韓国の38度線近くの町、パジュ(坡州)で軍人体育大会があり、ここに出場するためにと選手に化けて、5人が南に入る。バスで簡単に来れる距離なんだよなー、と改めて衝撃を受ける。
エピソード10に出てくる、脱北者役の俳優さんはキム・スヒョン。服装が何かのドラマのときのものらしい。
ソウルの買い物シーンで、ダメージジーンズを見つけて「南の人って案外貧乏なんだな」というセリフには爆笑!
ネットゲーム(ブレイドアンドソウルレボリューションというゲームらしい)のシーンが面白かった!「トマト栽培者」vs「血のにじむ努力」。リアルではジョンヒョク@中隊長vsクム・ウンドン@兵士(笑)。二人とも特殊部隊仕込みなので、すぐにコツをつかみ課金アイテムを買ってあっという間に強くなる。ハイレベルのバトルの末、クム・ウンドンが僅差で勝利。ジョンヒョクは悔しがること悔しがること(この顔もキュートだった!)。ユン・セリにネット接続を「キッズモード」にされてしまうのも屈辱(笑)。
北に帰った第5中隊の4人が、ソウルの何を恋しがるかに、もう大爆笑。まじめなパク・グァンボムは「自動で電気がつくのをつい、待ってしまいました」と言っているのに、PC房でゲームにはまったクム・ウンドンは「インターネットがあれば~」とすでにネトゲ廃人になってる。
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竜巻でトラクターが飛ぶ、とかパラグライダーで二人乗りいきなりOKなの?とかは突っ込みどころ。
ちょっとわからなかったのが、ジョンヒョクの兄、スヒョクの時計が村の質屋にあったこと。「お金も受け取られてない」そうで。どういういきさつだったのかな。見逃したのかもしれない。
スイス、イゼルトヴァルト。シグヴィルヴス橋。多分架空だと思うが、マッターホルンが見える湖畔の町。この音楽留学していたシーンやスイスでのエピソードがちょっととってつけたようで、モタモタしていたのはいまいちだったな。ピアノもいまいち、セリズチョイス財団によるスイスでの演奏会のシーンも、う~ん。それ以外のモチーフでもよかったなぁ。でも、韓国ドラマではピアノの弾ける王子様という設定は鉄板らしいので、これはご愛敬だな。