Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

パラサイト 半地下の家族

ポン・ジュノ=監督,2019年韓国
原題:寄生虫
ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム。
ソン・ガンホの映画は結構見ているなぁ。
これは!最後まで全く結末分からない,ありったけの事件的要素を詰め込んだフルコース映画。
是枝監督作品との対比で語られるけれど,ちょっと違う気がする。
韓国人の演技は激情型と言われる。この映画も圧倒的な熱量というか,格闘技的というか「激しさ」を体の真正面で受け止めないと観られない,という感じ。
こういうのが韓国で受けるんだろうね。
この背景には,韓国が休戦中,という事実があるんじゃないか。
普通に生きる人の緊張感は日本と全然違うな,と思うことは今までに何度かあった。大学院生の時,韓国人の留学生と話していて「ソウルでは,『気を付けて。隣にいるの北朝鮮のスパイかもしれないから』という台詞が日常生活でよく出てくるんですよ(笑)」という笑えるのか笑えないのかよくわからない言葉を彼らから聞いた。韓国人は,穏やかな日本が好きで,あこがれを感じているんだ,という印象を漠然と抱いた。
そう,韓国人と日本人は見かけも言葉も文化も生活習慣も笑いのツボでさえ,世界的に見れば極めて似ているけれど,韓国人は大陸人なんだよね。隣の国との軋轢がある生活がずっとずっと続いていて,それに対応するための能力や感性が発達してきた感じ。それが画面から伝わる熱量なのかな。

追記:アカデミー賞の作品賞,監督賞、脚本賞、国際長編映画賞を獲得。
社会派だけでも,エンタテインメントだけでも賞は取れなかったと思う。さらに言えば,こういう映画を国として丁寧に育てる韓国の文化振興方策の手厚さよ。
私が初めて劇場で観た韓国映画は「八月のクリスマス」で1998年だったか。正直,ストーリーが単調で作りが凝ってなくてで,おまけに俳優たちがあまりカッコイイと思えなかった(もちろん,韓国映画だから(ボヤっとしていると日本映画と思ってしまうせいか)違和感なくすっと入りこめて,これまでにない嬉しい体験だったことは認めるが)。
・・・それから20年,韓国映画が急速にマーケットのツボを押さえるように発展してきたことを想うと。トップの態度って大事だなあ。
日本映画は機微を追求しすぎるがゆえに地味過ぎて,アメリカ人の目を惹くエンタテインメントにはならないんだろうなあ。確かにヨーロッパの映画賞とは相性が良さそう。