Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

謝々!チャイニーズ

星野博美=著,文春文庫
米原万里さんの本を読んでからだろうか.社会主義共産主義に,そんな国に住む人の生きざまに,俄然興味が出てきた.もちろん,中国に関しては学生時代に中国映画にハマりにハマっていたから,日本と近いのにメンタリティーから何から全然違う点が面白い,という理由で以前から興味はあったのだけれど,米原さんが引く補助線で,深くクリアに考えられるようになった感じだった.
さてこの本も,米原さんの「打ちのめされるようなすごい本」から.解説が斎藤美奈子で,解説の冒頭「このページをいま読んでいるあなたは,どのような経緯でこの本にたどり着いたのだろうか」と問いかけられ,そのあとに続く「米原万里さんの「打ちのめされるような〜」の人もいるだろう」,という記述に,思わずビンゴ!とつぶやいてしまった.美奈子センセには完全に見透かされている.
いや〜面白いね.1993〜94年中国沿岸部.社会主義という壮大な実験からポーンと解放された人々がまずとる行動って何だろう.それを素直な言葉で描写し,考え,人生を見た.

彼ら(中国の人)は自分の行動や意識を制限するものを飛び越えてしまう自由さ,自分の人生を決めるのは,国や法律ではなく,自分自身だという認識を明らかに持っていた.国がどんなに不自由で縛ろうと,俺は俺のやりたいようにやるぜ,生きるのはあんたじゃなくて俺なんだからな,というたくましさを持っていた.そんな彼らを見るたび,日本にいる自分たちの自由のことを考えた.

改革開放とはつまり,「商売する自由」という扉が一気に開かれたことだと私は理解している.その扉が開き,人々はよーいドン!で一斉に走り始めた.資本主義を長い時間かけて学習している暇などなかったから,かなりの逸脱行為や掟破りもあったが,「俺にもできる」「私にもできる」という,夢を追いかける自由があった.

そう,全くその通り.これに尽きる.中国映画のスクリーンからほとばしる生きる力(文字にしちゃうと,こうもしょぼいのだが).前を向く,立ち直る,「ハイ次行ってみよ〜」の早いこと.香港映画ではストーリーが能天気な分,一段と分かりやすい.結局私はこれに惹かれたから,むさぼるように中国映画,香港映画を観ていたのだ(20年経ってようやく気付いた・・・).疾走感(←とにかく時代の変化が速い)を伴った痛快なドラマ,その一方で敗者たちのドラマが生まれては埋もれていく.それが面白くないことがあろうか.