Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

ロジャー&ミー

マイケル・ムーア=監督,1989年米国
全然期待してなかったが,予想に反して,めっちゃくちゃ面白かった.
GM企業城下町,Flint, Michiganで何が起こったか?レイオフの嵐に耐えるGMの工場労働者たち(典型的な中間層)を丹念に追う.実は,Flintはマイケル・ムーアの生まれた町なのである.
失業すれば家を追われ(追う側の保安官に密着取材),ファーストフードに転職しても使い物にならない元GM社員たち・・・リアリティ,リアリティ,リアリティ,である.
そしてFlint市民の半数が生活保護を受ける現実.それを知ってほしくてムーアはGMの会長ロジャー・スミスに会いに行く.その追い返され方がすごい.GM社長室の秘書,ロジャーの出入りする高級クラブの係など,揃いも揃って英語がとにかく丁寧で,それがかえってコワい.超・慇懃無礼で嫌な奴らだ.GMの広報部長はコメントを寄せ「企業が利益を追求するためにレイオフする,それが資本主義の健全な在り方だ」というのだが,そういう彼も最後には解雇されている.ここには思わず遠い目をした.
市の政策(高級ホテルHyattやAuto Worldというテーマパークなどの箱モノ作った)もことごとく失敗,そのお気楽ぶりもありえね〜感じ.テーマパークは半年で閉鎖,「不幸な人々の生活を見に行きたい人なんていない」というアメリカらしいあっけらかんとしたコメント.レイオフされた人たちに対する,裕福な人々のコメントは,「アメリカは自由の国,レイオフされたのは自己責任,Flintはいい街だ」と.厳しいなぁ.
最後のジョークが秀逸.「この映画はFlint, Michiganでは上映することができません」「なぜなら映画館が廃業して一軒もないから」・・・お,おぅ.