Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

ボーリング・フォー・コロンバイン

マイケル・ムーア=監督,2002年米国
アメリカ大統領選挙がすごい結果になったので,今こそ現実のアメリカに向き合うのだ!ということでDVD借りてきた.(といっても,前からマイケル・ムーアはコンプリしたくていたのだが・・・)
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銃社会アメリカの現実をマイケル・ムーアが明るくマジメに切り込む.
チャールトン・ヘストン全米ライフル協会(NRA)の会長だが,銃の乱射による殺傷事件があった都市で,あった直後にNRAの集会を開いてしまう.「我々が銃を持つ権利は守られるのだ〜」「そうだ!そうだ!」と.そんな集会を開いちゃうヘストンの神経もどうかしてると思うが,その映像が淡々と映し出される.ヘストンの自宅まで行って,「私自身NRAの会員だが・・・」,と切り出すムーアの突撃インタビューが面白かった.
アメリカの自由な銃所持問題は根が深い.根本的に「not armed, not responsible」という考えがあることが最初に紹介される.自衛しないのは無責任,という立場である.しかし,銃の所持率はカナダと変わらないのに,銃による殺傷事件は米国がダントツに多い.それはなぜか?
エピソードとして,Denver近郊Littletonという田舎町にあるコロンバイン高校の銃撃事件の映像が丁寧に紹介される.小ネタとして,猟犬にコスプレのように銃を担がせると,その犬がちょっとしたはずみで引き金を踏んでしまい,飼い主の太ももを撃ち抜いたとか(ぎゃわーっす!).
また,ある銀行では契約したら「お好きな銃を一つプレゼントします」と謳っていて,実際マイケル・ムーアがもらうシーンがある.さらに銃弾はKマートで簡単に買えちゃう.こ,怖すぎる.アメリカって銃所持はデフォルトとして,引き金を引くことにも抵抗がないお国柄だなあ.
犯罪件数が減っているのに対して,銃所持数が増えている皮肉も紹介される.チャールトン・ヘストンは「銃所持は米国の伝統」と答える.たぶんそれは表面的な考察で,一般の人が言っていた「銃を持つのは,不安な気持ちの現れ」,がより正解に近い.ムーア的なアイロニカルな答えは「日々,恐怖を詰め込まれているから」.アメリカは昔から酷いこと(英国との戦争,先住民族からの搾取,奴隷からの搾取)をしてきたから,「いつか仕返しされるんじゃないか」と脅えて暮らしていること,恐怖の起源はそこにあるんだ,と.この流れをアニメーションで紹介していたのだが,この映像作った人天才だよ!すごく分かりやすかった.南北戦争奴隷制度は名目上禁止になったが,それに反対する人が地下組織クー・クラックス・クランKKK)を作る.KKKが非合法組織になった1870年あたりに連射できる銃,コルトが普及した,という不思議な一致.いや〜なるほど.
音楽(BGMや挿入歌)もセンスあふれて「ここでこれ来たか」.ロック調に編曲された「What a wonderful world」とか皮肉だよなあ.
ヘストンの自宅が豪邸すぎて笑った.応接間には自分が出演した映画のポスターが.ジャネット・リーオーソン・ウェルズと共演した「Touch of Evil」(邦題:黒い罠)だった.