Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

日本における食品中の放射性物質の濃度(2012年まで)

Stefan Merz, Katsumi Shozugawa, and Georg Steinhauser (2015) Analysis of Japanese Radionuclide Monitoring Data of Food Before and After the Fukushima Nuclear Accident.ES&T,49, pp 2875-2885
DOI: http://dx.doi.org/10.1021/es5057648
・多くのデータが載っていておおっと思う.
・ただ,そのデータの取捨選択基準が今ひとつ読み取れなかった.参考文献を丹念に追えば,妥当なものを網羅していることがわかる,はず.
・2012年5月以降の変化が載っていない.その割に基準値の線がグラフに....これは,個人的には残念.100Bq/kg超えている食品があることを強調しているように見えたし,現在の福島の農業者サイドの努力をリスペクトしていないの?と思ってしまったから.まあ,論文に残念も何もないのだろうけど.
・事故1年後位は,この程度まで濃度が上がるということを言いたかったのだろうか(飲料水は事故直後でも即座に下がることはわかった).
・これを読んだ海外の識者たちは,「やっぱり日本の食べ物は放射性物質濃度が高い」と思ってしまうんじゃないかと心配.まあ,論文にこういう心配も何もないのだろうけど.
ストロンチウム90は,セシウム137との存在比で濃度が推定されている.その推定式が間違っている可能性もあることを著者らは指摘している.ストロンチウム90の実測データが圧倒的に足りてないことは私も理解している.しかし,従来は1:10だと思われていた90Sr:137Csの存在比が,実は2:1でした,10:1でしたと言われると不安になる.もちろん,ホールボディカウンターで測れば90Srもモニターできるはずで,ハイリスクな人,自分はハイリスクと思っている人はケアされているので現状でノーチェックということはないはず.だがしかし・・・というもやもやした気分だ.
・で,疑問点がいっぱい.とくに,Fig10のような図を描く仕事しているから気になるところが目についてしまう.
 −Fig9.90Sr:137Csの存在比がどういう理屈で経年的に変化しているの?とか事故直後はやっぱり1:10でいいのでは?とか
 −Fig10の基準値付近の食べ物ばかりを1年間食べ続けるとは具体的にどういうシナリオを仮定しているの(水は?)とか