成瀬巳喜男=監督,1960年日本(東宝)
成瀬巳喜男は昔の日本映画で一番好きな監督さん.淀川長治をして「成瀬映画は,金勘定ばっかりして,しみったれてて,や〜ね〜」と言わしめたらしいが,この映画,見事に金勘定ばっかりである.そして,そこがリアルで面白くて大好き.
銀座のバーの雇われママをしている主人公の圭子(高峰秀子).お客さんに所帯じみたところを見せないため,少し背伸びしたアパートを借りていてそれが家賃月3万.お店を移った時,前のお店の未収金が17万.甥っ子が小児麻痺で手術費用が7,8万.銀座に店を出す開業資金が100−150万.常連客からツケのお金を回収に回るシーンも多い.う〜ん,銀座で働くって大変だわ・・・
この映画で特筆すべきは加東大介.「工員20人」の町工場の社長,関根の役で,イケメンではないが圭子に結婚を申し込む.思わずほろりとしてよろめく圭子だったが,何とこれが結婚詐欺(爆).私も騙された,ものすごくいい味を出しているのだ.関根の工場は千住のお化け煙突が見える荒川沿いにあって,そこで関根の奥さんからすべてを聞くシーンとか・・・東京の場末感がすごくて面白い.