Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

お気に入り映画

下記の文章がHDから出てきた.2001年に書いたものらしい.どこかに寄稿する予定だったのだろうか.今読んでも面白いので,クラウド化すべくアップ.

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1995年に自分専用のパソコンを初めて買ったとき、一番にやったことは(当時切羽詰っていた卒論を書くことではなく)自分が観た映画のデータベースの作成でした。それまではノートに記録するのみでしたので、監督別、女優別、ひいては映画会社別、というソートがとてもやりにくかったのです。ソートをかけて、今まで観た映画を分析できるようになると、自分の映画の趣味の傾向や穴などが見えてきて、「もっと観てやる!!」と思うものです。というわけで、コンピューターはありがたい。
そうやって記録してきた中から、本当にお気に入りと言うものをセレクトしてみました。
その映画に深く感銘を受けるかどうかは、実は観たときの自分の状態にかかっている、というのが私の持論です。何回観てもいいと思う映画もあるし、5年後にもう一度観てみると今度はそれほどでも、というものもあります。初めてその映画に出会ったときの私の状態も、できる限り記録しておこうと思ってこれを書きました。

***日本映画***
となりのトトロ
誰が何と言おうと、日本映画の最高傑作だと思います。個々のキャラクターもさることながら、山々の緑の優しさがいいのです。色使いのなんと細やかなことか。是非、映画館で観たいと思っています(テレビでしか観たことがない)。スタジオジブリの作品では、「おもひでぽろぽろ」「耳をすませば」も好きです。日常生活をリアルに描いたもの、ノスタルジーが感じられるものが私には合っています。
ちなみに、「日本映画の最高傑作」のオリジナルは高校二年の時の同級生のセリフです。その彼と電話で話していて、「となりのトトロは日本映画の最高傑作だよな!」と息巻いていたのがおかしくて笑い転げた記憶があります。当時は何を言ってんだかと思っていましたが、今になってこの映画観直すとやっぱり最高傑作。ホリカワくんありがとう。遅くなったけど私も同意するね。

12人の優しい日本人
三谷幸喜にはまるきっかけとなった作品です。残念ながら舞台版のほうは観ないうちに本家の東京サンシャインボーイズが解散になってしまいました。心から後悔。日本映画は、それまでつまらない、難解だと思っていました。本当に面白い映画とはこういうものをいうのです。

「生きる」
黒澤明の作品の中では、これが一番好きです。黒澤は、なぜか雨や雪のイメージが非常に強いです。そして、画面に黒が多いこと。重い主題をそれらしく表現するのに欠かせないのですね。

Shall we ダンス?
劇場で5回見た、大好きな作品です。周防正行監督については、論文も書こうと思ったことがあります。

(ハル)
この映画も賛否両論ありました。パソコン通信の画面が映画のほとんどを占めるからです。でも、純愛がテーマで、大切なことを思い出させてくれて胸がキュンとなります。

「バウンスkoGALS」
援助交際をテーマにしたものなので、文部省推薦にするか議論があった作品です。日本のお役所も頭が本当に固い。いいものはいい、ただそれだけなのに。少女なら誰でも持つ冒険心と大胆さ/不安感、でもやっぱり少年よりたくましくしなやか!というその真実が本当にうまく描かれています。佐藤仁美と役所広司が「インター」をデュエットするシーンには大爆笑です。

「流れる」
最初に観た成瀬巳喜男作品がこれです。特に揚げたてコロッケにソースをかけて食べる杉村春子が最高です。登場人物の和服の着こなしも皆素晴らしい。

東京オリンピック
私は東京オリンピックの時にはまだ生まれていないのですが、急速に変わりゆく街・東京を扱ったものには全てどきどきしてしまいます。競技も、今のオリンピックのように商業化の影響を受けておらず、極限まで引き出された人間の能力がとても美しく、それを素直に描いているように見えます。マラソンのシーンも面白いです。アベベ(古い!)もいいのですが、沿道の観客がリアルに描かれていて鳥肌が立ちました。

洗濯機は俺にまかせろ
なぜいいのか、うまく説明できないのですが、筒井道隆の坊やっぽいところがうまく使われていてハマったのだと思います。

月とキャベツ
山崎まさよしのプロモーションビデオだと言われても許しましょう。映画とは、こういう非日常が必要なものです。

***外国映画***
「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」スウェーデン作品)
高校にあがる直前の春休み、母と日比谷シャンテシネまで観に行きました。この一本でアメリカ映画一辺倒だった私の視野が大きく広がったような気がしました。
とにかく、スウェーデンの映像が美しくて、その割に登場人物に変な人が多くて、でも人間って本当はこういうもんかも、と素直に頷ける映画です。

ニュー・シネマ・パラダイス(完全版、オリジナル版)」(イタリア/フランス合作)
私の部屋にはこの映画のポスターが額に入れて飾ってあるし、サントラのCDも持っている。それほど好きです。劇場で5回、テレビで3回くらい見ました。折に触れてシナリオ付きパンフレットも読み返しており、一時はイタリア語で台詞が口から自然に出てくるほどでした。一番好きなシーンは多くの方々と同様、ラストなのですが、それに加えてエンディングのタイトルクレジット+音楽。ここがうまく映画のダイジェスト版になっていて、こういうところはジュゼッペ・トルナトーレうまいなあ、と感心します。エンディングが陽気で前向きなので観終わってから必ずポジティブになることができます。

ペーパー・ムーン(米国)
とにかく、テータム・オニールの可愛さと小憎らしさには舌を巻きます。ニセ聖書売りやつり銭詐欺のシーンでの軽妙なやり取りも心地よくて、日常生活にどういう風に応用しようか、なんてつい考えてしまいます(できないよ)。

「旅立ちの時」(米国)
とにかく、これを観ると誰でもリバー・フェニックスの虜になります。中学生のときに見ましたが、私は1ヶ月くらい彼の寂しそうな表情にヤラレていました。ベートーベンのピアノソナタ「悲愴」を彼が実際に弾いています。

スタンド・バイ・ミー(米国)
確か1987年に最初に観ました。自宅で、テレビで、です。リバー・フェニックスには、本当にびっくりしました。鋭い目をした、子供と大人の狭間で揺れるクリス。これが、少年というものなのか!世の中に、こんな素敵な男がいるなんて(今まで私は何をして生きてきたのだろう)!彼が住んでいるアメリカを、そして彼自身をもっと知りたい!一種の恋煩いにかかりました。そして、中学高校時代はアメリカ映画にハマりました。おかげで?英語の成績も上がり、無事大学に合格出来たのですから、私の人生にリバー・フェニックス様は大きく貢献していると言えましょう。
しかし、最初に観たときは、テレビでしたので、仕方ないことだったのかもしれないけど、日本語吹き替えだったのです。かなり有名な、あるアニメの主人公の声も担当していた声優がクリスの声で、その点に関しては非常にがっかりしたことを覚えています。当時中学2年生でしたが「やっぱり映画は映画館で観るべきだ」と深く心に刻み、それが現在に至っています。

「裏窓」(米国)
アルフレッド・ヒッチコックの作品はすべて好きです。が、あえて一つ選ぶとすればこれ。私が将来お金持ちになったら、この作品のセットであるアパートの裏側を買い取りたい!という夢をまじめに抱いています。

「クレイマー・クレイマー」(米国)
ダスィテン・ホフマンは「レインマン」ではじめて知り、演技に感銘を受けました。でも、彼は若いころから凄かった!フレンチトースト作りが上手になっていくところが好きです。妻役はメリル・ストリープです。彼女がなぜ離婚を申し出るのかは、映画を見ただけでは不明です。その点に関しては未だに釈然としませんが。

アパートの鍵貸します(米国)
アメリカ映画の監督で最高と思っているのは、ビリー・ワイルダーです。中でも、この作品は心が温まります。冒頭のシーンでは、たくさんの社員がタイプを打ち、電話を取る様子を俯瞰しながら、それと対照的に役員室の風景が映ります。そういうシーン一つ取ってみても、うなります。当時のアメリカの会社というものを一瞬で表す手法の鮮やかなこと。また、ワイルダー監督作品に共通していることは、主人公(男)がとにかくよくしゃべること。うまいしゃべりはそれだけで人を幸せにすることができます。そして、とにかく伏線が利いていて、どんな些細な小道具にも無駄というものがない。ワイルダー監督作品では、絶対にウトウトしてはいけません。

「昼下がりの情事」(米国)
アメリカ映画のくせに、パリに行ってみたい!宿泊は絶対ホテルリッツで!なんて思わせてくれます。典型的なワイルダー監督のパターンですが、特筆すべきは重要な場面でいつも出てくる楽団。その場の雰囲気をさりげなく盛り上げる上手な小道具ですね。(余談ですが、『ドラえもん』の秘密道具の「ムード盛り上げ楽団」は、この映画を見て思いついたものなのではないかと勝手に想像してます。)

フォロー・ミー!」(英国)
この映画に注目したきっかけは「Shall we ダンス?」の裏話です。詳しくは割愛。ロンドンを舞台にした、素敵なかくれんぼごっこ、というのかな。とにかく、全ての男性に観て欲しい。女性が好む男性とは、本当は、こういう人なんです。

「君さえいれば(金枝玉葉)」(香港)
香港映画って、こんなに面白いんだ!ベタで、B級で、演技も皆下手なのだけれど、スクリーンの中に生身の生きた人間がいる。すごいエネルギーです。男装のアニタ・ユンは反則であると数々の映画評で目にしますが、私はそうは思いません。とにかく笑わされ、泣かされます。

いますぐ抱きしめたい(香港)
王家衛の初監督作品です。彼の作品はすべて観ているのですが、主演のアンディ・ラウが最も輝いているので大好きです。雨の中でのマギー・チャンとのキスシーンには、ただただ涙するばかりでした。あんなシーンを詩的に撮れる王監督、すごいの一言です。特筆すべきは、やはりアンディ・ラウの服装ではないでしょうか。白無地のTシャツ、ジーンズ、寒いときには革ジャン。香港の単純な気候がこういうシンプルな服装をさせるのでしょうけど、なんと良く似合っていることか。日本の男性でこれだけでキメられる人がいたら、是非会ってみたい。(単に映画制作側に金がなかっただけか?)

「女人、四十。」(香港)
これも香港映画のイメージを一新しました。やっぱり女はすごい。自分も女に生まれてよかった。

「運動靴と赤い金魚」(イラン)
まず、テヘランの貧しい家族の生活描写。それだけでグッと来るものがあります。お金持ちの家にも注目です。イランがどんな国なのか予備知識もありませんから思わず細部まで見入ります。

「ロッタちゃんはじめてのおつかい」スウェーデン
スウェーデン映画にまたしてもヤラレてしまいました。子どもが子どもであり、大人が大人である、という当たり前のことに感動する私も馬鹿みたいですが。スウェーデンの人はそういう当たり前のことをきっちりできるんですよね。