Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

香港大夜総会 タッチ&マギー

渡邊孝好=監督、1997年日本・香港合作
Youtubeに画質・音質が良いのが上がっていて、20年越しでようやく。ああ、この内容ではポリコレ的にヤバすぎて今更DVDにならない、というのはわかる。
私は結構好き。くだらないんだけど、香港返還前のドタバタ、時代の空気がうまく出ていて意味もなく泣ける。そして、ただただアニタ・ユンが観たくて。彼女はやはり、非の打ち所がないくらい素敵。
そう、香港は変わってゆくけど永遠なの。
岸谷五朗が演じる立神(ナイトクラブでの役名:タッチ)は、結局職業不明だったがフリーライターという設定だったみたい(怪しい仕事あっせん業にしか見えなかった!)、香取慎吾はフリーカメラマンの柴田(役名:マギー)を演じる。柴田はカメラマンとしてビッグになりたくて香港の黒社会をスクープするという危ない橋を渡る。というわけで二人で香港へ。なのにいろいろあって、二人で夫婦に変装し、怪しげなクラブで歌う。
ストーリーは超絶くだらないんだけど(←くだらないことは確定なので繰り返し書いた)、全編香港ロケのカメラワークが結構イケてて、当時の活気あるというかハチャメチャな街並みを映し取っている。怪しいナイトクラブもいい感じ。日テレのカメラマンが出張したんだよな、と思わせる、日本人が香港を撮った視点が、貴重だ。クリストファー・ドイルとかピーター・チャンとは切り取り方が明らかに違う。
20世紀末の日本ではLGBTの議論など、日の当たるところでは到底できなかった。なのに、この映画は先進的である。ホモにも人権があるし、ホモを好きか嫌いかは単に個人の趣味である、というスタンスが貫かれていて、同性愛者を気持ち悪がったりおちょくったりという表現が一つも出てこず、清々しい。岸谷五朗が堂々と同性愛のおやじを演じていて、これだけでも見る価値はある。香取慎吾も立神の「俺はホモだ」という台詞に対してキレ気味に「知ってます!!」って返すの、良かった。それがどうした、問題はそこじゃないって感じ。
最後、香取慎吾が本当は男だったというのがばれて(ガタイの良さで最初からバレバレ、と考える方が自然だが、この映画ではなぜか後半でバレる)、アニタ・ユンが演じる歌姫、コーラとつかの間のデートを楽しむのも良かった。エスカレーターを逆走するシーン、危ないんだけど!それを俯瞰したカメラワークが秀逸で、こういうのが題材になってしまう香港はズルい。
岸谷五朗の廣東語がうまくて感銘。音楽がファンキー末吉で、レベル高いと思うよ。