Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

桃(タオ)さんのしあわせ

アン・ホイ=監督,2012年中国(香港)
山形フォーラムにて.良かった〜こういうのが観たかった.映画館で広東語のシャワーを浴びるのはなんとも心が浮き立つ.実は学生時代以来の香港映画だったので13年ぶりだろうか.

広東省生まれの桃さん(ディニー・イップ)は、13歳から60年もの間梁家の使用人として4世代の家族の世話をしてきた。今は、生まれたときから面倒を見てきたロジャー(アンディ・ラウ)が彼女の雇い主で、彼は映画プロデューサーとして中国本土と香港を往復する多忙な日々を送っていた。そんなある日、桃さんが脳卒中を起こして倒れ……。(シネマトゥデイ

相変わらず香港の市井の人々の生活は興味深い.アン・ホイもそういうのをさらりと描くのがうまいんだね.
香港の高齢化社会っぷり,老人ホームの選び方,老人医療などなど,介護(といっても夫の祖母だけれど)に片足を突っ込んでいる私としてはとっても面白かった.また,香港の住宅事情.社会的地位の相当高い家庭でも高層マンション.香港はあの高密度感が魅力かと.玄関から入ってすぐにある使用人部屋は,洗濯機置き場と一緒というのも,なるほど〜と思ったところ.
*****
「私の雇い主は,魚は新鮮なのを蒸したのしか食べないの」タオさんが自分の跡継ぎとなる家政婦を探して「面接」している時に言うセリフ.どんなにかロジャーを可愛がり愛しているか,そして家政婦という仕事に誇りを持ってきたかがわかって,涙が流れたよ.タオさんのつくる料理の,それはそれは美味しそうなこと.ロジャーの同級生がタオさんの手料理について思い出話を語るシーンも,ほんとうに何気ないんだけど泣けて泣けてしょうがなかった.ロジャーの大好物の牛タンの煮物も,リクエストされるとタオさんは「体に良くないよ!」とか言いながら結局はちゃんと作っておいてくれていたことにまた,涙涙.
こんな感じで料理のシーンが多い.中華鍋にたっぷりの油を熱し,ネギを炒めて,その他香味野菜を炒めて火が通ったらお湯を注ぎ,漢方薬みたいな粒をいれて煮たてる,それが蒸し魚のソース…というようなシーン.お腹空いているときは要注意だ.
また,タオさんが倒れて,リハビリを終えて老人ホームから懐かしの家に一時帰宅した時,家の中のホコリをチェックする目線とか笑いを誘う.いや〜家政婦のプロ中のプロ.
一方でロジャーと散歩するときのタオさんの少女のような笑顔(これもまた泣けるんだ…).しかし,アンディ・ラウと一緒に住めるなら私も家政婦立候補するわよ(って違うか).