内田樹=著、文春文庫
面白かった。。印象に残ったことを箇条書きで。
・フェミニストたちの仕事について「被害者である彼女たちの主な仕事は『私はこれに我慢できない』というリストをひたすら長くしてゆくことでした。」
→そう。こういう仕事、必要なんだけど、わかるんだけど、全体のモチベーションを上げるとは思えないんだよね。私はちょっと遠慮したい類の仕事だなあ。私の人生の目標「機嫌良く生きる」だもんなあ。
・シンガポールの悩み「文化と伝統がないこと」「『一度失われたら取り返しがつかない』ような種類の風土や文化や伝統の『原点が存在する』という確信が国民的規模では共有されていない」(p.164)
→こういう国では、国民統合という意識をもたせるのがすごく大変なんだそう。国が小さすぎる+多民族からだと思うけど、国が大きすぎ+多民族のインドとかも大変だよね。インドの映画館では映画上映前に国歌斉唱だからね、全員起立して。アメリカも何かにつけ国に誓うし。こういうことしないと国がまとまるって無理なんだろうね。日本にいると全然考えないけど。
・戦争の負け方「ヨーロッパ人たちは、現に殺し合いをしていながら、それでもなお『タンマ』が効くようなルールを当事者が共有している。少なくともそのようなルールがあったほうが『負けたとき』に困らないという点についての合意がひろく成立しているのである」(p.231)
→良くも悪くも、ルール作りが上手な国って戦争慣れしていると思う。戦いの極意は、勝ちつづけることでなくて、負けてもすぐ回復できること。負けのダメージを少なくすること、何度でも負けられること。日本の太平洋戦争中の意識は「一度たりとも負けない」。負けを口にするのがタブーであり、それで動いていると、負けたときのダメージからなかなか立ち直れない、これは却って危ない。ゼロリスク志向もこういう感じよね。