Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

実践!交渉学

松浦正浩=著,ちくま新書

hayashiさんのブログ(こちら)に紹介されてたので買って読んでみた.すごく読みやすくて2時間で読了.面白かった!一点難癖をつけるならば,科学技術と社会的合意の項は一般論どまりで,もうちょっと突っ込んで書いて欲しかったかも.

用語メモ
BATNA:Best Alternative To a Negotiated Agreement(交渉が決裂したときの最も良い代替案)
ZOPA:Zone of Possible Agreement(合意可能領域)
BATNAは自分が損をしないように設定する,最低限譲れないラインってことだね.すごくよくわかる.
パレート改善:妥協できる点と譲れない点をはっきりさせて,それが相手と違ったら交換できるのでWIN-WIN.相手にない得意技で勝負とか,CO2の排出権取引とか.
共同事実確認:そう,まさに「どこまでが科学(事実)で,どこからが約束事か」を皆が情報共有してるのがWIN-WINの意思決定のために大事なんですよ!
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BATNA・・・この響きがインド的なのでつい思い出した.
インドでは買い物のとき交渉するのが当たり前なのだが,インド人の売り手はBATNAを決して言わないということを・・・.
そして,インドで買い物をすると,どうしてあんなに負けの気分がしたのか・・・.
たぶん,インド人と交渉の末買い物をすると,WIN-WINのはずなのに,向こうは大きくWIN,こちらは小さくWIN,だったからなのね.この不平等感がorzの原因だったのだ.これは,情報の非対称性が圧倒的だから仕方がないのだが,納得は行かないよ.
インド商人はBATNAを頭に叩き込む,その気力がすごい.どんな細かい品でも「これ以下は絶対に譲れないぜ」ラインがビシリと頭に入っている.ついでにいうと,『パッケージ』案,たとえば「じゃあ,コレとコレをつけていくら」と,たたみかけるように出されちゃうとお手上げなのである.
ただ,常にBATNAを頭に入れているって,相当切羽詰まってないとできないという気もする.交渉学じゃないけれど,私も,母子家庭状態だった時はBATNA,ZOPAを常に定量化できてた.子どもと私と仕事の妥協点,みたいな.これってある種マルチステークホルダー問題?(違うか・・・)
子どもが熱出して,締切間近の仕事が終わってない時「シッターさんがダメなら実家の母,実家の母がダメなら近所の人,近所の人がダメなら家で子ども見ながら仕事だ!」という判断が一瞬でできるってある意味コワイ.(意思決定が異常に早いってのも,ホント終わってる感じだ〜笑)