Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

オマージュ

シン・スウォン=監督、2021年韓国
イ・ジョンウン、クォン・ヘヒョ、タン・ジュンサン、イ・ジュシル

ヒット作に恵まれず、新作を撮る目処が立たない映画監督の女性ジワンは、60年代に活動した女性監督ホン・ジェウォンが残した映画「女判事」の修復プロジェクトの仕事を引き受ける。作業を進めているとフィルムの一部が失われていることがわかり、ジワンはホン監督の家族や関係者を訪ね、失われたフィルムの真相を探っていく。その過程で彼女は、今よりもずっと女性が活躍することが困難だった時代の真実を知り、フィルムの修復が進むにつれて自分自身の人生も見つめ直していくことになる。(映画.comより)

これは良かった。タイムトラベル、映画製作というテーマがロアン・リンユィと被るものの、こちらの方が好みだった。特に、フィルムの編集のシーンに技を感じた。あと、意外なフィルム片の使われ方。
韓国映画って、良くも悪くも強烈で直球(単に欲望に忠実なだけかもしれないが)。
50歳前後の女性の現実と、来し方行く末がかくもストレートに描かれる。冒頭、水泳で体を鍛えるシーンで始まる(うまい構成)。主人公は上手に泳げない。人生の暗示か、これは。自分が監督した映画は、客の入りが最悪だし。相棒は転職で「あとはよろしく」と言って去ってしまう。つまり自分も失職寸前ということ。体調面では、突然の出血と思ったらまさかの子宮筋腫だった。崖っぷちにいる主人公の描かれ方が、とにかくリアルだった。
1960年代は、女性が働くことがなんと大変だったことか。韓国初の女性判事の映画を、1960年代にはまだ珍しかった女性監督が映画にする。そして、その古い修復を引き受けた主人公。それぞれの時代の先達たちがエールを送ってくれているのだから、もう少し頑張ってみようかなとふっと深呼吸したあたりで、なんだかうまく回っていきそうな余韻を残して終わる。
韓国も、映画館事情は日本と似ているかもしれない。閉館し取り壊すばかりの映画館はもの悲しく、映画全盛期の空気だけかすかに保存されている。素敵な描き方。
三羽がらす、は日本語からの借用語ではないか。三羽がらすの一人、編集担当の女性がまだご存命でコンタクト取れたのも、いい話。韓国の家で年取っての一人暮らしは大変そうだな。畳に座って洗濯物たたみのシーンでおばあちゃんの膝が痛そうだった。
子宮筋腫の手術でつきそう、つれない夫も良かった(夫、めっちゃイケメン。『冬のソナタ』で「ソンベ(先輩)」と呼ばれていた俳優さんが演じていた)。そして、可愛い息子。文学部は就職がよろしくないとのことで、大学で何をやっているかと思えば詩の朗読だった。そんな可愛い息子を演じたのは『愛の不時着』で4人組北朝鮮兵士役の一人だったタン・ジュンサン。二十歳過ぎてもお母ちゃんにべたべたしていて良き。