Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

ファイター、北からの挑戦者

ユン・ジェホ=監督、2020年韓国
イム・ソンミ、オ・グァンロク、ペク・ソビン

韓国映画の幅の広がりを感じる。すっごく美人という系統ではない女優の台頭、北朝鮮を積極的にからめるストーリーテリング
女性の人生の描き方をとってもいろいろあるし、韓国人と言っても、一筋縄ではいかぬ。
「○沢直樹」で溜飲を下げているような日本は相当ホモソーシャルな社会で、この点、韓国に完全に後れを取っている。

ストーリーは公式サイトから。

韓国、ソウル。ひとりの女が小さなアパートに辿り着いた。脱北者、リ・ジナ。休む間もなく食堂で働き出した彼女は、中国に残した父を呼び寄せるためにより多くのお金を稼ごうと、清掃の仕事を掛け持ちすることにした。そこは、館長とトレーナーのテスが2人で切り盛りするボクシングジムで、悲惨な過去と怒りを抱えて壁を作るジナに、2人は静かに燃えるファイティングスピリットを感じ取る。グローブを渡されたジナは、次第にボクシングの世界にのめり込んでいくのだった――。

さて、主人公のジナを演じたイム・ソンミは、「愛の不時着」で北朝鮮の小さな町のバザールで「南町(韓国)」の化粧品をこっそり売っていた店員さんを演じていた。彼女、典型的な朝鮮系の顔立ちで、私はすっごく好み(長男の同級生、YYくんのお母さんに似ている)。
北朝鮮の軍隊で少しだけ手ほどきを受けたというボクシングが非常にリアルで、パンチが「重い」。女性でこんなに重いのが繰り出せるんだ。北朝鮮から韓国へのパンチが重いという暗喩にもなっていて、彼女の人生を邪魔するものをドスドス打ち砕いていく感じもあって、とにかく比喩的。

ボクシングジムの館長が、あまりにカッコよいうえに飲んだくれてソファーで寝ていたりする。こういうヒーローの描き方は前近代的なのも面白い。ジムの助手、チャラチャラしているのにあの強いジナに一目惚れ。ぐいぐい押してきてるのに、ジナがクールにあしらって見向きもしないのは、新しい男女関係で、良かったなぁ。日本映画ではまだまだ、こういう男女関係を描いた映画は少ない。