Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

「A」

森達也=監督、1998年日本
荒木浩、村岡達子
国立映画アーカイブ、よくぞ上映してくれました。これは学生時代からずっと観たかったけど観れてなかった。良かった良かった。
物事を色んな面から見るの、大事。
荒木浩さんは、オウム真理教の広報副部長。オウム真理教への風当たりが最も強かった1995年秋から、森達也さんが彼に密着している。森さんがオウム真理教幹部の懐に入っていく様子に、只々脱帽である。カメラ安岡卓治(たかはる)さん、素晴らしい。
驚くのは、荒木さんが極めてまともな青年であること。1968年生まれ、京大卒。「何事も中途半端は良くない」ということでオウム真理教の教えを極めようと思ったこと。理想的な社会を作りたいと願う、極めて普通の青年。
1996年7月23日裁判に立つとき着ていたスーツが(ヨレヨレではあったが)「入学式に両親が作ってくれた一張羅」。荒木さん「両親から受けた生を全うしたい」と。こういうセリフが本当に泣けた。丹波のおばあちゃんに会いに行くシーンは涙涙で、もう、観ていられなかった。

亀戸の総本部前で、警察の職務質問からわざとらしく地面に転がる警察、公務執行妨害の疑いで一晩留置所。奇しくもカメラが一部始終を撮影していたことにより、その映像が証拠となって釈放されるのも良かった。警察ってこんなにひどい人たちだったっけ?思い込みに囚われて、オウム真理教信者である彼らも人間であることを忘れていない?正義って何?と深く考えさせられた。


シャンバラ精舎(熊本)。村井さんの部屋があったようだ。
教団幹部の山本さんの言葉もすごく堪えた。「大学入って、こんな奴らが日本を率いていくのか、と絶望して3日で辞めた」、極めてまともな感性ではないか。だからといって入信する先がオウム真理教、と言うのはバランスに欠けていると思わざるをえないが。
一橋大学・福田雅章ゼミ、犯罪学、刑事政策が専門のようだが、荒木さんに講演依頼!進んでるー。しかも街で福田ゼミの学生が荒木さんにタメ口をきいている、この連帯感は何。

挿入歌もいい。「どんな~に暗いBaby、涙堪えて~」
20世紀の東京、私が必死に歩いた東京の風景も懐かしく。教団事務所のブラウン管テレビやファックスも懐かしく。マハーポーシャ、あったあったという感じ。