Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

冬冬の夏休み

ホウ・シャオシェン=監督、1984年台湾
無条件に好きな映画。もっと早く見ればよかった。レンタルDVDでも普通に観られた、と思いつつも、アップリンク吉祥寺にて。この期に及んで必死に映画館に行っているのは、ミニシアター応援のため。私はクラウドファンディングをしない代わりに、実際に見に行くことを選択。長女も誘って課金は2倍、でも全く高いとは思わない。足を運んで、賑わいに貢献すること(今ペチャクチャおしゃべりはできないけれど)、そこに意味があると思うからだ。

さて、この映画。すべてにおいて、懐かしい。「仰げば尊し」で始まって「赤とんぼ」で終わる。何なの、この日本リスペクトぶりは。これだけでも日本人は相当ほっこりするのではなかろうか。
個人的にも懐かしい。私と主人公の冬冬、同年代だ。小学生男子の服装に見覚えがある。ポロシャツ、半ズボン、白いハイソックス。日本じゃない、台湾なのに、なぜだ。
台北の駅で冬冬の同級生が「夏休みは日本のディズニーランドに行く!」と言っていて、日本が近いのか遠いのかわからない。

冬冬と妹の婷婷が夏休みを過ごすのは、台中に近い銅羅という小さい町で、おじいさんとおばあさんの家で世話になることに。そのほか、母親の妹家族、弟(叔父さん)もいる大家族だ。おじいさんは医者をしていて、ひっきりなしの診療でなかなか忙しそう。強面で厳しいが、冬冬に漢詩を暗唱させたりと孫への愛情はたっぷり。おばあさんは、客家語を喋っている(おじいさんとは話している言葉が違う。台湾は多言語!)。
家は日式の診療所。日本統治時代に建築された建物らしい。Googleストリートビューで見られるかなと思ってみてみたら、なんとまだ残っていた。台湾旅行したら銅羅駅で降りてこの建物見に行くぞ!

銅羅の子どもたちとすぐ仲良くなる冬冬がまことに良き。小学生の小さな冒険が詰まっている。亀のかけっこ。川で裸で泳ぐ(自分だけ仲間に入れてもらえない婷婷が、怒って少年たちの服を川に流しちゃうの爆笑!)。とりわけ仲良くなった阿正国(ア・ジョングオ)は、川で家畜の水牛の世話をしている。その牛がいなくなった時には下流まで牛を探しに行くのだった。台北の都会生活からは想像もつかない。
遊びの途中で強盗を目撃、さらにはその強盗をかくまっているのが、なんと冬冬の叔父さんで、家に遊びに行った冬冬は強盗と鉢合わせ!間一髪逃げ出した。
その叔父さんは叔父さんでイマイチ脇が甘く、恋人を妊娠させ、当然のように親(おじいさん)は許さないので、叔父さんの結婚式に出た親族は冬冬だけ!
・・・こんなエピソードを、台北にいる両親に手紙で書く。冬冬の母親は病気で手術をする(そのために兄妹が銅羅の家に預けられた)、重症だったが一命をとりとめて回復しつつある所に、父親が二人を迎えに来て台北に帰るところで終幕。

妹の婷婷も4歳くらいだろうか。電車内でおしっこを漏らしちゃうのは微笑ましいが、なかなか賢い子。線路に隠れていたら電車が接近して轢かれそうになったとき、発達障害の女性(周りからは距離を置かれている)、寒子が通りがかって、彼女の機転で一命をとりとめる。それ以来、婷婷と寒子は親しくなる。ただ、寒子の予期せぬ妊娠と流産は、後味よくないものがあった。

小ネタとしては、冬冬の部屋にドラえもんの漫画があったのは興味深かった。冬冬は銅羅にラジコンを持ってきていた(これだけでもかなりお金持ちであることが分かる)ので、ラジコンブームだったのかな。冬冬の足元、最初は靴下+靴だったのに、仲良くなってくると裸足にサンダルになるのが、本当に良かった。何にもないけど、かけがえのない夏休み。尊い