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タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

なぜ共働きも専業もしんどいのか 主婦がいないと回らない構造

中野円佳=著,PHP新書
仲野さんの文章はジャーナリステックなのに前向き.素直.事例が多く読みやすい.無駄に分断を煽ってないし,解決策を提示していて清々しい.
(あれ?ということは,普通のジャーナリストの文章は私的には「文句ばっかり言って後ろ向き」「読みにくい」と認識しているということか!うわっ)
今,日本の子育て世代って,過渡期である.ひしひしと感じる.2000年代半ばの「真の」均等法世代が就職し,結婚し出産するようになって立ちゆかなさが顕在化してきたということだ.
書籍タイトルへの答えは,「共働き世帯は,とにかく時間の余裕がなくてへとへと,子どもと十分に向き合えていないのではないか,という自信のなさと罪悪感(p.38).一方で専業主婦は子どもと向き合いすぎてへとへと,なのに働いていない罪悪感」でどちらもしんどい!うわ~なんだこの出口のない感じは.
解決の方向は,子どもがいてもいなくても既婚でも未婚でも,長時間労働をやめて早く帰れるように,ということしかない気がする(6時には家に着いて6時半には夕食をというのが理想だよね).要するに男性の長時間労働が変わるしかないわけだが,ついでに無駄な家事も削減するというカップリングを一つよろしく.
より現実的には,働き方として「皆が階段を上る」仕組みを変えるとの提案があり,共感した.男女とも,階段を上る時期や,緩やかな上り方を選べる仕組みが必要よね.大事な指摘としては,長時間労働当たり前(男女とも)のエグゼクティブには,カップリングとして,ケアが外注できる仕組みがあること.日本にはいずれもないから,そりゃあ無理ゲーだよなぁ.
男性目線で言うと「正社員の格差が広がるじゃん」という反論もあろうかと思う.ただ,正社員に限らなければ実際すでに格差はあるわけだ.「真っ当で穏やかな」生活をより多くの人が出来るように,という目標のもとでは「今は緩やかに」「今は仕事漬け」のライフスタイルを「選べる」こと,選んでも誰からも文句言われないことが,大事なんだと思う.あとは男性がそれを許容できるか,プライドの問題もまだまだある気がする.
フリーランス保護法を,という提案も面白い.フリーランスに限らず勤め人でも柔軟な働き方を実践できるのは大事.「柔軟な働き方は,むしろ交渉して得られるもの.ゴネてなんぼの世界だから.ゴネ得という言葉自体が日本企業特有,という印象」という声は刺さった.
保育園のあり方の議論で,「子どもの立場から見て」ベストな保育園とはという議論がないのは,気のせいだろうか.個人的にはゼロ歳は集団保育をしないで,1歳からは希望すれば全員が集団保育を受けられる,っていうのが(この少子化の)現代では一番いいんじゃないかと思っている.フランスでは育休3年取得して母親が見ていた場合と,保育園に預けた場合の子どもの言葉の発達を比較した研究があって,保育園に行っていた方が優れていた,という報告もある.保育の質の向上は課題としてもちろんあるだろう.ただ,子どもにとって集団保育はどうなの?という議論が,今欠けているのではないか,と思うのだ.エビデンス出すのは難しいと思うけど・・・