Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

海よりもまだ深く

是枝裕和=監督,2016年日本
大好きな是枝作品であること,小さいころ数年,公団住宅に住んでいて,懐かしい風景出てくるかな?と思って興味を持ったことからDVDで観た.
清瀬駅北口からバスに乗って10分くらいかな,典型的な団地のロケーションである.是枝作品の常連さん,樹木希林が主人公の母親役!実は清瀬と言えば,国立ハンセン病資料館⇒ハンセン氏病を扱った映画「あん」の主人公は樹木希林,という符合・・・考えすぎだろうか.
阿部寛演じるダメ男(小説家になりそこね,探偵事務所勤務,倫理的な仕事スタイルとは決して言えない.趣味はギャンブル)が団地に住む母(樹木希林)を訪ねるシーンから始まる.訪問目的はもちろん,お金.昭和のホームドラマによくある設定で,テンプレ過ぎて笑う.ダメ男は姉(小林聡美)にも金を無心,ああ,ダメだこりゃ(笑).でも,馬鹿な息子ほどかわいいんですよね,母親って.私も母に久しぶりに会いたくなった.
細部の描写,面白すぎて目が離せない.団地の玄関の鴨居部分が低すぎて首を傾げないと入れない阿部寛.間取りは3DKか.ダイニングが狭くて,テーブルに座った人は冷蔵庫の扉が誰かに開けられると,お辞儀してそれをかわさなければならないこと.古いお風呂場.のれんは縄のれん,あったあった!カルピスを薄めて凍らせて自家製シャーベットを作ること.喪中はがきのあて名を書く元・嫁(真木よう子)などなど.お約束だが,料理のシーンが美味しそう.母はカレーうどんの素を手作りして冷蔵庫にストックしておくのだった.
孫の「しんご」役の少年がいい.可愛くもあり,背伸びしている感もあるけど,演技が自然.この時期の少年の特徴がそのままフィルムに映っている(この手腕,なかなかないよ?).
樹木希林の,有無を言わせぬ強引な行動は説得力ありすぎ,ばあちゃん強し.そして探偵事務所所長(リリー・フランキー)の「誰かの過去になる勇気を持つのが,大人の男ってもんだよ」という台詞が,破壊力強すぎて,ひぃーーっ!
結論:女性と少年とダメ男を描かせるなら是枝監督!!