Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

「ローマ人の物語」は超おすすめ!

昔、世界史で習ったとき、「なぜ東ローマ帝国って東がついてるの?変だねぇ」と思った記憶がよみがえる。分裂、西は滅亡したからなのだけれど。じゃあ、国はどういう条件の時滅亡するの?理由も習ったけど、すっかり忘れちゃうくらいインパクトなかったなあ。そんなやる気のない・歴史嫌いでも超おすすめ。

この本は私が大学学部生のころに初めて出て、土木・都市計画系の学生の間では静かなブームになった。20代になったばかりの私はブーム本には興味がないふりをしていた。実は、もちろん興味があった。しかし当時は、常に金欠だったし、その割に欲深くあれもやりたい、これもやりたいで時間が取れなくて読めなかった。学生の身分で時間がないと口にすることははばかられるので、あえて自分の意志で読んでいないのだ、と自分に思いこませようとしてたのだ。ようやく、この年になって全巻読破の心構えができた。お金もあるしね。

さて、何が面白いってヒーローがメチャクチャかっこいいこと。カエサルはもちろん、グラックス兄弟が好み。何か新しいことを始めようとする男、惚れますね・・・

それはむしろ些細なことで(いや、カッコイイ男ってすごく重要な要素だけど)、読み進むたびに感激しているのは、自分の中の断片的な知識が有機的につながる瞬間が、何度もあったこと。

夏にドイツに家族旅行して、ケルンから東へ50km、アーヘンの近くのZweifallという村に行った。そこには石積みの砦があった。案内してくれた従兄弟(日本人とドイツ人のハーフだがドイツ語と英語しか話せない)は、この砦ができた時期について”ancient”としかコメントしなかった。ancientって、だからいつやねん!と私が突っ込んでいたのは言うまでもない。
今ならわかる、Zweifallもかつてローマ帝国の一部だったから、それはローマ式宿営地の跡に違いないと。

昔から思っていたゲルマン系の言語(ドイツ語、英語、スウェーデン語とか)とラテン系の言語(フランス語、スペイン語、イタリア語・・・)の分布の違い。ローマ帝国の北端で明確に分かれていることに気づいて激しく納得。ワインがローマ人が持ち込んだ文化だということも。ドイツの主なワイン生産地は旧ローマ帝国内である、なるほど〜。

なかなか覚えられなくて苦労した英単語もローマ帝国頻出単語(笑)を知っていれば簡単。「補助の」という意味のauxiliaryがローマ軍団の補助兵auxiliusからきていたとは。このネタが頭にあれば意味は一生忘れません。単語覚えるのって脈絡なくて大変だよなぁって思ってたけど、実は脈絡ありまくってることに気がついて妙に感動。

このような感じで疑問が氷解していく。これほどまでに心の透き間を埋めてくれる読書も久しぶりだ。読んでるとすごく気分がいい。

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ローマ人の物語31」セヴェルスが始めたローマ軍への優遇策が結果としてローマ帝国を軍事大国→帝国の弱体化へと導くことに。
p.108「人類の歴史は、悪意とも言える冷徹さで実行した場合の成功例と、善意あふれる動機ではじめられたことの失敗例で、おおかた埋まっていると言ってもよいのかもしれない。」
ああ、なんと含蓄深い言葉よ。