Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

あほらし屋の鐘が鳴る

斎藤美奈子(著),文春文庫

これは時事評論の部類に属するのだろうか.面白い。一テーマの文字数が文庫本のぺージ数で5ページくらいが一番面白い。そして,これが連載されていた「pink」という雑誌をリアルタイムで読みたかった.挿絵が斎藤美奈子の毒舌に輪をかけた切れ味でイカす.
セミと女王蜂」では,女の敵は女,ということをしみじみ考えてしまった.ここでいう女王蜂は,「女性には平等に門戸が開かれていない社会で例外的に成功した女性」のこと.「女王蜂は,自分の特権的な地位を心ゆくまで楽しみたい.成功した人の常として,彼女は自分の成功は(幸運な偶然のせいではなく)自分自身の才能と努力の賜だと信じることを好む.じじつ,彼女はその地位を得るまでにひとかどの努力をしてきたので,後から続いてくる者たちが自分よりラクにその門をくぐることを好まない.」とはっきり書かれている.う〜ん,なるほど.でも「女王蜂のつもりで,やっていることは男の働き蜂といっしょじゃんかい」またまた,なるほど〜.後輩に期待もせず,肩の力を抜いて淡々といい仕事をするってことは,やっぱり相当難しいよね.
後半の「女性誌探検隊」も見事.誰も書かなかった秀逸な考察…「an・an」が長女(いつも流行の最先端,とんがり気味,プライドの高いロマンチスト),「non-no」が次女(堅実,地味,聡明でしっかり者),「JJ」が三女(頑固で自己表現が下手,出来のいい2人の姉に抑圧されて「姉さんたちみたいに美人でもないし頭も良くないし,あたしはあたしでやるからほっといて」)なんて.「JJ」は,確かに「阿修羅のごとく」の咲子(この場合は四女だけど)みたいだなあ,とは思っていた.