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タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

AoPの論文

AoP=Adverse Outcome Pathways

Increasing Scientific Confidence in Adverse Outcome Pathways: Application of Tailored Bradford-Hill Considerations for Evaluating Weight of Evidence
Becker et al. (2015) Regulatory Toxicology and Pharmacology 72, 514-537
doi:10.1016/j.yrtph.2015.04.004
著者にIgor Lincovさんがいる。化学物質が伝達されるときに通る経路に着目して,その関連が強いか弱いかを判断.強かったら毒性の大きさを考える際に重要経路となるので,似たような物質についてもその活性を見ようじゃないか,というセンス.実際は実験しているわけではなく,文献調査を行って現時点でどういうことがわかっているかをまとめている感じ.たとえば相関係数を計算してみる,というアプローチがありうるが,それはされていない.
Annexにケース・スタディとして載っているのは,データ多そうだなと思われる有名な物質の事例だなぁ.
経路Specific事例:(CYPモノオキシゲナーゼと酸化ストレスを誘導する)AhR活性まわりの経路【ダイオキシン類のデータを使う】
経路Specific事例:(ミジンコ子孫のオス化を引き起こす)幼若ホルモン作用物質の誘導経路【殺虫剤に含まれる物質;ピリプロキシフェンとかフェノキシカルブとかのデータ.】
経路Specific事例:(神経発達を遅らせる)有機リン系物質とNeuropathy target esteraseとの結合部位【クロロピリフォスとか.】
経路Specific事例:(子宮内膜がんリスクを上昇させる)エストロゲンレセプターとの結合部位【17βエストラジオールとか】
物質Specific事例:(マウスの精巣がんリスクを上昇させる)六価クロムの経口摂取からの細胞毒性と再生性過形成の誘導
六価クロムが載っているから,この論文ちゃんと読んだが...なんか既存の知見をまとめているだけのようにも見え,ちょっと微妙な...
話はAoPから外れるが,日本では水道水中六価クロムの発がん性については全然議論になっていない.大丈夫かなあ(具体的に被害が出るというわけでなくて,新しいエビデンスが出て基準がえらく厳しくなる典型例なのだが,それに対するディフェンスはちゃんと出来ているのかな,という意味で).miceで影響が出たらヒト影響も見なおしするのがセオリなのだが...

Applying Adverse Outcome Pathways (AOPs) to support Integrated Approaches to Testing and Assessment (IATA)
Tollefsena et al. (2014) Regulatory Toxicology and Pharmacology,Volume 70, Issue 3, December 2014, Pages 629–640
doi:10.1016/j.yrtph.2014.09.009
この論文,上記のBecker et al.に引用されていない.流派が違う,とかあるのかな?