Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

東京兄妹

市川準=監督,1995年日本
東京・雑司が谷の昔ながらの一軒家に二人で住んでいる,二十歳前後の兄妹の話.
非常にじれったい映画で,それをいとおしむためにある.20年前の映画だが最近はこういうの少なくなった(企画書が通りにくくなった?)気がする,私がアンテナを張ってないだけかもしれないけど.つまり,創る側も観る側もじっくりとしたものを嫌う時代になってきているんじゃないか.
何がどうじれったいかというと,兄妹の両親はすでに亡くなっていて,亡き父母のいたころを尊重するように,居住まいを正して丁寧な生活をただ繰り返している兄妹を淡々と映している,というところが.特に兄が,変化しないうえに,それを拒む.妹のほうは恋人と同棲したり,波風立ったり地味にいろいろある.・・・しかし最後には元の生活に戻る.というこれだけ.全然変化がない!!
雰囲気は侯孝賢の「珈琲時光」そっくりで.美しい「昭和の」日本を切り取っていて,家の中の調度もそれは見どころ満載で.細部は楽しめるんだけどストーリーは上に書いたような感じ.ただ,妹役の粟田麗さんがとても綺麗.
一点だけ違和感というか気持ち悪いと思ったところは,21世紀になる直前の先進国の映画なのに,女の人の自由がないところ.少なくとも昭和の女の人ってこれが実態だったのかと思うとちょっと怖い.自分の意志を持たず,父(この映画の場合は兄)に従い,夫(または恋人)に従い続ける.男がタバコの火を切らして付けられないでいると,さっとマッチを擦ってあげるとか.こういうことするの飲み屋の女性だけかと思ってたけど?
ま,この監督好きなので次は「東京夜曲」観よう.