Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

幸福の黄色いハンカチ

山田洋次=監督,1977年日本(松竹)
小学生の頃,家でTVで観た記憶があり,当時はストーリーが分からなかったのにラストシーンでもらい泣きしたことを覚えていた.だから多分すごく「感動する」映画なのだろうなと思って・・・30年経っちゃった.レンタルDVDで発見したので観てみた.
これは子ども時代より今観たほうが100倍くらい心に残る映画.当時は高倉健さんの魅力がわからなかったからねえ.
ラストシーンの解説は,ここでは割愛.
この映画,北海道を舞台にした超一級のロードムービーになっている.日本でもロードムービーが撮れるという可能性をみせつけた山田洋次さん.いや〜ほんとすごいわこの監督.
東京からカーフェリーにて釧路〜網走〜美幌峠〜阿寒湖〜陸別新得狩勝峠,ときて夕張でラスト.
高倉健が演じる男は網走のムショからシャバに出たばかりで,まず夕張に行ってみようと思っている.交通手段は鉄道(当時はまだまだ元気だった国鉄)を乗り継ぐつもり(だったのだけど結果的には武田鉄矢桃井かおりの車に便乗しちゃう).そのため,鉄道駅の近くでおりて汽車を待ってみたりご飯を食べたりというシーンが多い.この,時々映しだされる駅や駅前の風景が面白いのなんのって.とくに印象に残ったのが,釧路のメーデーの様子(撮影は1977年5月1日),そして網走駅前の活気あること.今は廃線になった北見〜池田を結ぶ路線(旧国鉄・池北線)の,ちょうど真ん中にある陸別駅とその町並み.当時から2時間に1本しかない便では,やっぱり廃線になるよな,とか思いながらとても興味深く見る.
40年弱前の,5月の北海道の風景.自然も素晴らしい.そして今は札幌一人勝ちだけど,あんなにまんべんなく活気があったのはほんとうに驚いた.山田洋次の映画は,寅さんシリーズもそうだけれど「新日本紀行」みたい.地方の光景を焼き付けている記録映画としても秀逸である.そういう意味でも後世に残したい遺産だなあと思う.
DVDにメイキングもあったので観てみた.びっくりしたのは山田洋次さんが「映画というものは,完成した瞬間に最初から撮り直したくなる」と語っていること!「あそこは,もっとああやって撮ればよかったなとか」後悔の連続なんだそうな.なんということでしょう・・・