Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

命の格差は止められるか

イチロー・カワチ=著,小学館101新書
地域コミュニティの崩壊と幸福度について,ちょっと考えていたので手にとった本.
普段の近所づきあいや行事などで強い結束力を持つ,お互い干渉しあうコミュニティのほうが長生きということを説く第一章に始まり,行動経済学の原理に基づいた管理が必要,という話でエピローグ.
公衆衛生と疫学を,もう一度ちゃんと勉強したくなった.化学物質のリスク評価と管理というのは,社会疫学の文法とかなりかぶるところがあったのは面白かった(もしかしたら化学物質分野が疫学の真似をしたのかもしれない).
それにしても,ルーズベルト大統領が脳卒中で倒れて死去したというところから疫学研究(フラミンガム心臓研究)がデザインされて脳卒中の原因が突き止められた,という話は面白かった.
人々は直感に近いプロセスで行動しているから,感情を司る「システム1」を効果的に使って良い方向に導くほうが,理性を司る「システム2」より効果的という,行動経済学社会疫学に組み込む,という話.健康ネタは特に「病は気から」なので,そうなのかも.
へぇーと思った点:
・格差がある社会の方が健康になりにくい.一見「勝ち組」にみえる「上」の人も格差があると健康でない.その理由は,「知らず知らずのうちに自分と周りの所得を比べてしまうことで,健康に影響が出てしまうのです(p.61)」
・傾向スコア分析による「主観的健康観」→幸福度の指標よりも客観的かもしれないので,使えるかも?!
・病気の判定基準,もしかしたら,環境基準よりも科学的根拠なく決まっているものも多いのでは?→「医学上の色々な指標は「恣意的」であることが多い(p.166)」