Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

豊洲のこと

時間があるときに,東京都のサイトから「豊洲新市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議」(H19-20年度)の議事録をちょこちょこと読んでいる.結構な分量ではあるものの,全部見られて,誰がどんな発言したか記録されているってのはイイネ.
こんなに揉めてるのは,関係者への説明不足,もっというと説得不足ってことに尽きるんだろう.
しかし,報道で耳にしたが,地下構造物案が出てきたのはH23年の春で東日本大震災直後の混乱期,なのだ.この時期に「十分な関係者への説明」は難しかったんじゃないかと思う.まあ,敢えてその時期にそういう動きがあったのも,なにか意図的なものを感じないわけではない.
土壌汚染対策に関しては,(会議で決まった方法である)除去+清浄土での埋め戻し,でなくて(いつの間にか)地下構造物になってたわけだが,なるほど,上記の会議議事録には地下構造物案は全然出てこない.
地下構造物(空間)と最初に聞いたときに私は「共同溝かな?」と思ったのよね.電気,水道,下水道その他インフラを地下にまとめて通して,メンテナンスもできる十分な空間があるってのはすごく便利だろうなあ,と思ったから.実際は追加の汚染対策が必要となった時の空間的バッファという位置づけだったみたいだけど.あと,石原さんだっけ,どなたかおっしゃってた「駐車場としての有効活用」も視野に入っていたとのことだが,豊洲の「車両の施設内乗り入れを禁止し、ほこりや排ガス等の外気の影響を防ぐ閉鎖型施設」のコンセプト(←会議第一回目資料にきちんと書いてある)と矛盾するんじゃね?と思ってみたりもする.こんな風に,コンセプト迷走の感が透けて見える.築地からの移転を反対する動きも強くて,かなり初めの段階から一枚岩ではなかったんだろうな・・・・
健康リスクでいうと,「築地と豊洲で顕著な差はない」.むしろ築地のほうが汚い(なぜなら古いから).だから他の要素を優先して決めてくれ,でOKかと.まず,そこの土壌が汚染されていたとしてもその間から染み出す地下水で生鮮食品を洗うわけではないから,土壌の問題は関係ない.一方で築地は(渋滞しがちな)首都高都心環状線から近いので自動車排ガス由来の大気汚染が(豊洲より)懸念される,ってことはないか?(築地の大気は今まで誰も心配してないっぽい.そこは不思議.大気中のベンゼン濃度は都心では大同小異なのかも知れない【要チェック】.)こう考えると「築地で大丈夫だったら豊洲も大丈夫です」って説明があってもよさそうなものだが?
あともう一点不思議な点として,どうして食品の話になると神経質なまでにゼロリスクが要求されるのか.(反語でなくて,食品の化学物質汚染になると,常識的なレベルより大きい安全係数を世間が要求する背景には一体何があるのか知りたいだけ.)生鮮食品だと食中毒をコントロールできるオペレーションにすることが最大のポイントなのに...
平田先生は「データから安全は担保されているものの,さらなる対策が必要」という趣旨のことをおっしゃっている.つまり,健康リスクが減らないことを知りつつも,誠意を見せるために対策をします,ってことになる.食品関係はいつもこういうロジックである.誠意のために都民の皆さんはいくら払うつもりなのか?とか,(目標ラインを既にクリアしているから)さらにどこまで対策すればいいかがわからない(お金がなくなるまで対策する?),とかモヤモヤする.税金の使い方としては問題だと思うよ...