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タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

ウォーターサーバーの雑菌

朝日新聞に載っていたニュースから(下記囲み参照).ちなみに,水道水じゃないから,水道水質基準じゃなくて食品衛生法の清涼飲料水の基準(水道水質基準より緩い!)と比較するほうが適切と思う.
さて,この件.一般細菌の数が多かったら,どのような(悪)影響があるのか?ここがはっきりしない(きちんとしたdose-responseカーブがない)から,影響の大きさについて考えられない→細菌が一定数いると影響の種類は特定できないけれども影響が出る(出たことがある)というという経験則で基準を作る→基準が何を守っているのか,意味を考えることなく,基準値超える超えないの部分だけに注目が集まる,というパターン.ゼロイチで影響あり無しを論じるのは,古典的な判断方法.まだまだこのレベルでしか議論できない事象が多いのも事実なのだなあ(不二家の期限切れ原材料使用事件の時と同じ).
あと,記事にある「体に影響のあるレベルではない」の根拠が,「検出された細菌は(健康な人に対する病原性はほとんどない)ラルストニア属」だから,としているようだけど,じゃあなんで水道水の基準は何のためにあるのか?と疑問を持つ人も出てきそうな説明だと思う.水道水の基準は一般細菌数の基準であり,一般細菌数を数えるということは,病原性あるものもないものも一緒に検出しているのであり,検出されたらその細菌の種類をさらに詳しく見て,影響の程度を調べないとダメです,という構造になっていることが説明として抜けているかと.
さらにいうと,そもそも調べた時はたまたまラルストニア属しかいないものだったけど,ラルストニア属がいるってことは近い将来もっと他の細菌も検出されるようになる可能性があるってことだよね,と考えるとこの書き方は正確なのだろうかと逡巡した.

朝日新聞の記事(こちら

家や会社での利用者が増えているウオーターサーバー(給水器)の宅配水。麻布大学の古畑勝則教授(微生物学)が調べたところ、使用中に細菌が増殖し水道水の基準を満たさないものが数多くあるとわかった。体に影響のあるレベルではないが、「安全性確保のため、衛生管理の対策が必要だ」と話している。

 宅配水とは、業者がサーバーを利用者に貸し出し、定期的に容器入り飲料水を宅配するもの。原料は地下水や濾過(ろか)した水道水など。一般家庭では、家族の人数にもよるが10〜12リットル程度の容器1本を10日前後で消費するという。

 昨年度、家庭や事務所などで使用中のサーバーの水140検体を調べた。その結果、全体の3割にあたる42検体が、水道水の水質基準における一般細菌の基準値(1ミリリットルあたり細菌の集落数が100以下)を上回った。

 また、7割超にあたる102検体は従属栄養細菌の目標値(1ミリリットルあたり集落数2千以下)を超えていた。この細菌は水質基準の項目ではないが、水質管理上注意すべきだとして厚生労働省が目標値を定めている。

 検出された細菌はラルストニア属などで、健康な人に対する病原性はほとんどない種類だった。

 水を冷蔵保存する形式のサーバーの32検体を調べた別の調査ではどちらの細菌も基準・目標値以下だった。

 古畑教授は「元々生き残っていた細菌が室内に常温で置かれているために増殖している」とみている。9月25日に東京で開かれる日本防菌防黴(ぼうばい)学会で詳しい内容を発表する。

 「日本宅配水&サーバー協会」によると、宅配水のメーカーは全国で200から300社とみられる。開業には保健所の許可が必要だが、宅配水自体の衛生管理基準は法律で定められていない。市場はこの10年で急成長し、昨年の市場規模は1207億円、サーバーは約327万台、水の製造量は約111万キロリットルに達している。(編集委員・大村美香)

こちらのまとめサイトにある「水道水より汚いかもしれない」という見出しには「当たり前じゃん」と突っ込んだ.
水道水は圧力をかけて配水する関係上,閉水路で送られているから,基本的に大気と触れない.送ってる途中で水道管の中に空気(←雑菌が存在する)が入ってくることは,基本的にない(そのような場合は穴が空いているということだから,空気と触れるという以前にパイプから漏水しちゃう).水自体は送る前に浄水場で消毒済み.ということは,「蛇口をひねって出てくる水はほぼ無菌状態」とイメージしてもらうのが,実態に近い.
あのウォーターサーバーは空気(もちろん消毒されていない)を適宜取り込むでしょ?汚いの当たり前.いや,空気取り込むところにHEPAフィルターとかがかませてあるのかな?