Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

「フクシマ論」原子力ムラはなぜ生まれたのか

開沼博=著,青土社
第二次大戦〜高度成長期.東北の(貧しい)田舎に何が起こったのか.その1断面を切り取った作品.ルポルタージュとしてはとても面白かった.
原発が主題と言うよりも,”高度成長期グラフィティin日本の農村”という印象を強く持った.

私も東北の田舎に住んでいる.昭和30年前後の市町村大合併前は「○○村」であった,いわゆる何もないところである.
このような農村・漁村は,第二次大戦〜高度成長期に何を選び何を選ばなかったか.この「フクシマ論」は福島県浜通りの,ある貧しかった漁村の例だけど,これは私の住んでる山里にもあてはまるなぁと思って読んでいた.「中央(国)」-「地方(県)」-「ムラ(市町村または集落)」この図式はものすごくよく理解できる.
農地解放で生活システムや意識が大きく変わり,でも経済的にはやはり貧しいままであった.しかし,伝統的に村の自治はものすごく進んでいる.自由に発言しやすい雰囲気も,むしろ合併後の市や,県よりずっとある.そして,うまい具合に人望のあるまとめ役がいる.そして豊かになりたいという欲望.その中にうまく,原発が入り込んだ.だから東京電力福島第一原発は目立った反対運動が起きなかったのかぁ.

やはり文章がうまいから,こうやって修論が単行本になるんだよね.考察の浅さとか批判する声もあるけれど,読ませる文章であることは否定出来ないだろう.ああ,羨ましい・・・