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タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く

山田昌弘(著),ちくま文庫

大変読みやすいが,どこかで一度聞いたような内容ばかり.さすが売れっ子山田昌弘先生.著者の主張を再確認したい人は良いだろう.

リスクというキーワードがたくさん出てきたのは意外だった.現代は「良くも悪くもなく,そこそこ」という,いわゆる中流の道を選ぶのがすごく難しくなっているということは納得した.すべての人がリスクをとる社会.がんばる人,がんばりたい人,ストレスに耐えられる人には良い時代なのだけれど...

挑戦意欲のない人も,そこそこ生きていけた(なんてもんじゃない,右肩上がりだった)高度成長期のイメージで,現代を生きることだけは避けるべきかも知れない.でも,希望に格差があると書いてしまうと,希望を失う人が増えそう.まず現実を見よう,と著者は書いてはいるが,では,どうしたら?という処方箋が具体的でない.そういう終わり方なので,読んでいて落ち込む.

斎藤美奈子の「モダンガール論」と比べてしまうのもどうかと思うけれど,「モダンガール論」の方がずっと前向きな終わり方だった.というわけで斎藤美奈子風に処方箋を考えてみると,

・理不尽なことがあったら,声を上げよう.公的機関も親切に耳を傾けてくれるだろう.
・隣人を大切にしよう.お金がないとき,頼りになるから.
・若者は頭でっかちにならず,とにかく体を動かそう(仕事の面でも,スポーツをしようという意味でも)

いわゆる勝ち組?(正社員,既婚,子あり)の私に言われたくないかもしれないけど.