Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

川に生きる−水危機の処方箋−

私の進路を決めた岩波新書「都市と水」の著者,高橋裕先生の最新作である.私は結局土木工学科には行かなかったが,この業界には縁があり,この間は間近でお姿を拝見してしまった.小柄だがとても素敵なオジイさまである.

予想に反して,この本の内容は平凡でつまらない.総論的なこと,イメージばかりしか述べていない本では,説得力がない.特に河川環境に関しては「多自然型川づくり」なんかも,今は誰もが口にするし(先駆者としての功績は大きいと思うが),雨水の再利用なんかも,どこかで聞いたことばかり.

しかし,やはり歴史的なものは面白い.高橋先生が安藝皎一先生の弟子だったこと,卒論(昭和24年ごろ!!)で河川改修の環境に与える影響を調査したこと.卒業後すぐ東大土木の教職に就かれるわけだが,高度成長期で重厚長大,土木関係者が胸を張って土木やってますと言える一番よい時期を過ごされたこと.日本が自分たちの技術でどんどん変わっていくんだから,やりがいあるよね.最終講義録も,懐古趣味的なところはあるが歴史を振り返るのはやはり重要だと思った.