斎藤美奈子(著)
秀逸、の一言。これまで読んだ中で最高。
斎藤美奈子のすごさを思い知った一冊.
女子または女性の「今よりもっと良くなりたい!」という欲望を歴史史料に乗せて見せるのだから,この人はただ者ではない.そして,史料がなんと女性誌,たとえば「婦人の友」とか.笑えます.
−女の子には出世の道が二つある.社長になるか社長婦人になるか.この道はどのように分かれるの?−,という斎藤美奈子の純粋なギモンから軽い気持ちで書き始めたというが,フェミニズム,男女共同参画,少子化など現代の問題を考えるにもあまりにぴったりで驚いた.
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20世紀はじめ(これって明治時代!)から大正にかけての主婦の出現,女学校進学の一般化.といっても,限られた層のみのこと.この流れに乗れない人が大半.
昭和はじめの「階級闘争」・・・この頃の女工,女中,もっとひどいのは農家の主婦(一日20時間労働・・・睡眠時間を4時間に削って趣味のことをしているのではなく,賃金労働と家事だけで一日20時間経っちゃうということ)の生活に大いに衝撃を受ける.
そうこうしているうちに戦争の時代.なぜ母が,妻が戦争に協力したか?「一種のボランティア活動で,身分に関係なく女性が自由に活動できる数少ない場だったから」それはそうだ!!それにしてもすごい考察.
戦後,高学歴化,主婦化がいよいよ一般庶民にも広がる.戦前あんなに憧れの対象だった「主婦」に自分もなれるんだから,そりゃ,仕事は腰かけで主婦になるしかないよね.結婚はみんながするものだったのも,「今よりもっと良くなる」という欲望に忠実に従った結果にすぎないのだ.今,20代,30代の人たちが結婚しないのも分かる.結婚してよりよい生活が送れるとは限らないから.
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そうして現在.斎藤美奈子は「自分のやりたい仕事を見つけること,見つけている人はそれをやめないこと」と書く(男女問わず).現代の女性の生活って,1世紀にわたる闘争?の結果勝ち取ったものだ.自由に謳歌できる人生に感謝し,楽しく生きていこうと思った.