濱口竜介=監督、2023年日本
大美賀均、西川玲
今までの作品よりはずっとわかりやすい。だからかもしれないが、今までの濱口監督作品の中では、一番ワクワクしなかった。
濱口映画の真骨頂と言える、車の中での会話。緊張感、ドキュメンタリー感は面白い。他愛のない、意味のなさそうな会話が、実は結構重要。東京人が、地元の蕎麦屋でそばを食べて「温まりますね~」「それって味じゃないですよね」というリアルなやり取りもあった。
グランピング場建設に関する、説明会の風景がリアル。各人それぞれの立場で、率直に物を言うが、結局開発側のコンサルタントや意思決定層(なんと、本業は芸能事務所)には伝わらないのだ。東京からの移住者の理路整然とした意見はわかるが、私はあまり共感できなかった。浄化槽くらい、きちんと作ればいいだけの話なのに、と思わなくもない。
主人公・巧の立ち位置は最後までよくわからない。行動が人間離れしているし、娘(8歳)との関係も、親っぽさはなく。いつも学童保育のお迎えを忘れる。そんなのあり?沢の水をタンクに汲む描写。その水をそば打ちに使っている。水が汚れると困る、という描写。
自然との共生という生易しい言葉では片付けられない、畏怖はある。ただ単に自然礼賛でもなく、田舎文化のドロドロもなく。私の目から見ると、八ヶ岳の別荘地は、結構都会である。すぐそばに大きなバイパスがあって交通はあまり不便でないし。
つまり、、この映画のスタンスがよくわからなかったため観ていて戸惑いがあったということか。ノれなかった理由はそのへんか。うちの長女の評のとおり、一級のホラー映画と見るのが一番近いかも。