Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

ロボット演劇「働く私」/アンドロイド演劇「さようなら」

長年,観たいと思っていたので,チケットがあると聞いてスケジュールなど考えずに購入した.仕事?この日に予定を絶対入れないという進め方をすればいいのだ.こんな私でも一応社会人です.
ロボット演劇は想田和弘さんの「演劇」で稽古の様子が収録されていた(はずな)ので興味を持った.
企画は,青年団東京藝術大学大阪大学ロボット演劇プロジェクト.
・ロボット演劇「働く私」
「タケオ」と「モモコ」という2体のロボットと若いカップルの4人(?)が作る空間.タケオは「働きたくないんです」という.のっけから考えをひっくり返された,ロボットって人のために奉仕するもんだよね?しかも皮肉なことに人間の祐治は失業中.彼が暇そうに雑誌をパラパラめくっているところから舞台は始まる.これはもうどこを笑えばいいの?という設定なのに何か笑える.
タケオとモモコは普通の人がイメージするロボットそのもの.にもかかわらずロボットが人に見えてくる,というオリザさんの狙いにはあっさりとハマり,タケオが可愛いのなんのって.ストライキしても可愛い.ロボットのくせに,などとは思わないのだ.しかし祐治が働かないのは,ポジティブには受け止められなかった.この差はどこから来るの?私の中にこんな「差別的な」視点があるとは思わなかった.
モモコの焼くピザはおいしそうだったなあ.
・アンドロイド演劇「さようなら」
美女アンドロイドが,死にゆく人に延々と詩を朗読するという,かなりシュールな設定.瞼も眼球も人間みたいに動くアンドロイド.ただしバランスの問題で歩行できないという制限があり,この美女さんはずっと椅子に座っていて詩を口にしているのだ.ホスピスケア効果があるのか?逆に,ない気がする・・・
ミニスカ・黒ストッキングの美女という造形は,石黒先生の趣味なのだそう.おいおい!!
平田オリザによるアフタートーク「ロボット演劇は何を目指すか?」
1時間も用意してくれてオリザさんの話をじっくり聞くことができた.オリザさんにとっては,ロボット(アンドロイド)はただの「モノ」.「もう見慣れちゃって何とも思わないですね」とのコメントも衝撃だったが「このアンドロイドを楽屋に置いていた時,酔っぱらった劇団員がずっと話しかけてました」「アメリカで上演したとき,向こうの人ってアンドロイド見慣れてないじゃないですか,老夫婦が『あの役者さん上手だったね,ホントのロボットみたいだった』と話しながら帰路についていたんです.気づけよ,と思いました」などの爆笑ネタも飛び出し,面白かった〜.
演劇をするということは,人間らしさとはどういうことかを徹底的に追求する作業だ,という言葉に,いつも頷いてしまう.動作に適度なノイズが入るのが本当の人間らしい動きなのだ.しかし役者さんも練習重ねていくとその動作がスムーズにでき「すぎ」ちゃって,それが違和感の元だとか,トークが何でこんなに面白いんだ!!
ボカロもそうだが,キカイが人間を超えていく,超える瞬間に「見えた!」と思う,この交差したような感覚が結構好き.あっち側に片足突っ込んでしまった,でも舞台が終わるとこっち側に帰ってくる.この行ったり来たりの界面上に何かある,私はそう感じることが多い.
【メモ】音楽:以前は「ロボコップ」だったが,分かる人がより多いという理由で,ダースベーダーのテーマに変更,とな.