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タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

TD-TKモデルを用いた、塩分濃度変動のある汽水域でのカドミウム毒性予測(アサリ)(ES&T)

Predicting Risks of Cadmium Toxicity in Salinity-Fluctuating Estuarine Waters Using the Toxicokinetic−Toxicodynamic Model
Guangbin Zhong, Shunhua Lu, Rong Chen, Nengwang Chen, and Qiao-Guo Tan*
Environ. Sci. Technol. 2020, 54, 13899−13907
https://doi.org/10.1021/acs.est.0c06644
・地点ごとの水質基準導出
・海水成分が多いと毒性が低くなることは、直感的には自明だが、それを定量的にモデルで示すのは結構骨が折れるはずで、すごい仕事だと思う。
・BLM⇒TD-TKモデルで精度を上げている。正直アサリくらいだとTD-TKの考慮は不要じゃないかと思わなくもないが、私はアサリを飼育したことがないから相場観がわからない。

河口域では,塩分濃度が急激かつ連続的に変動するため,汚染物質,特に金属のバイオアベイラビリティーに大きな影響を与え,サイト別水質基準の導出を困難にしている.本研究では、塩分濃度の変動シナリオに応じた河口域における金属カドミウム(Cd)の毒性を予測する手法を開発した。河口域のアサリPotamocorbula laevisを用いて,安定塩分濃度(塩分濃度=5, 15, 25)と変動塩分濃度(5-25)の下で,toxicokinetic-toxicodynamic (TK-TD)フレームワークを用いてカドミウムの生物蓄積と毒性を測定した。カドミウムの生物蓄積は塩分濃度の上昇とともに減少し,生物の固有のカドミウム感受性は塩分濃度20前後の中間濃度で最小値に達した.本研究では、塩分濃度の変動下でのカドミウムの生体蓄積と毒性を予測するために、塩分濃度が安定した塩分濃度で測定したTK-TDパラメータを補間することで、塩分濃度の変動下でのカドミウムの生体蓄積と毒性を予測することが可能となった。このモデルを様々なカドミウム濃度に拡張するために、生物学的リガンドモデル(BLM)をTK-TDのフレームワークに統合した。BLMをベースとしたTK-TDモデルは、河口域における塩分濃度の変動をシミュレーション及びモニタリングしたシナリオに適用することができた。以上の結果から、BLMモデルとTK-TDモデルを統合し、塩分濃度が変動する河口域における金属リスクの予測と基準値の導出に有用なツールを提供することができた。

この丁寧な仕事、できるだけの体力がある中国の奥深さよ。悪いけど到底日本は勝てないんじゃ?
うがった見方をすれば、それだけ中国ではカドミウム汚染が深刻な状況なのかな。
研究者のモチベーションが上がりやすいうえに、カドミウムは有害金属の中ではきれいに結果が出やすいから論文になりやすい、ってのもあるかもしれない。
カドミウムは価数変化や錯体形成の挙動が割と教科書通りなので、BLMでの説明力がダントツに高かったように記憶している。