Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

パブリックコメント出したんですけど「食品からのカドミウム摂取に係る安全性確保について」

内閣府食品安全委員会から出ていた,標記の件のパプコメ募集について.(募集要項はこちら

5月末に募集がかかり,私も意見を出したが,その後音沙汰なし.
通常,国民からの意見と委員会としての対応とが対になってWEBで公開されるのだが(早いと締め切りから3ヶ月くらいで).
対応はどうなったんだろうと最初は日々気していたが,最近忘れていた(そんなのチェックする時間がない!,というかパブコメ出したことすら忘れている)ので,備忘録的にはてなに項目立てしてしまった.ちなみに,私のコメント内容は以下.

全体に関して.
現行のPTWIを維持するという判断は,日本における最新の疫学調査結果を考慮した科学的なものと考えられ,妥当であると考えます.また,長年にわたって行われている膨大な疫学調査の結果を精査されている手続きもよく理解できました.以下細かいことなのですが,主に曝露評価に関して,コメントさせていただきます.

4.3.2.1項の脚注について.
トータルダイエット・スタディTDS)に関して「ここでは、もっともカドミウム曝露が高い地域とそれに隣接する地域で食品13 群から530 サンプルを採取し、カドミウムの濃度の測定及び摂取量の推定を行っている。」とありますが,これは本当でしょうか?もしこのようなTDSが行われているとすれば,この脚注は4.3.2.2項(汚染地域)に書くべきなのではないでしょうか.私はTDSは非汚染地域の一般住民に対して行われていると理解していました(文献4-20および4-21は非汚染地域での調査結果をまとめたものではなかったでしょうか?).ご確認いただければ幸いです.

4.3.2.1項の国民栄養調査を用いたモンテカルロ・シミュレーションについて.
国民栄養調査は「ある秋の1日の調査」のはずですので,この調査から求められた標準偏差は,(個人内の日間変動を含むものであるため)年間平均摂取量の集団におけるばらつきよりは大きくなります.したがって,この標準偏差モンテカルロ・シミュレーションに用いるパラメータとすると,摂取量分布は広がってしまいます.摂取量分布の95パーセンタイルを論じる場合は,このような点に非常に注意が必要です.長期間の曝露が問題となるカドミウムの場合は,個人内の日間変動を排した標準偏差を用いるのが正確なのですが,現状では仕方がないと理解しております.評価書中に,この点に関する考察(解説)が必要と考えます.

4.3.2.1項のモンテカルロ・シミュレーションの結果の解釈について.
この結果を素直に読めば,非汚染地域の一般住民でも5%はPTWIを超えているということになります.この点を,どのように解釈すればよいのかの解説が必要と考えます.例えば,「この分布は計算上のものであり,(摂取量分布も現実より広めであることから)実際にはPTWIを超える人はほとんどいないと考えるのが妥当である」のか,「14.4ug/kg以上になる割合はXX%で小さいため,問題になるとは考えにくい」のか,または「5%がPTWIを超過することは許容範囲と考える」など.現在の記述では,何となく不安をあおられているように感じる人が多いのではないでしょうか.

以上,よろしくご検討いただければ幸いです.なお,上記はあくまで個人の意見であって所属機関の意見ではないことを申し添えます.