藤井聡=著,文春新書779
土木工学,とくに交通工学の授業を2年受けた者にとっては特に新しい知見はないのだけれど,そして,公共事業「だけ」が日本を救うとは思わないのだけど,「こんなに基本的な事実を新書に書いて訴えなければならないほど,土木関係の常識って世間に伝わってないんだ!」と思った.
たとえば,東京の地形の特徴−天井川(中学の社会で習うはずなんだけど・・・)で洪水による大災害の確率が高いこと.この事実を考えずに(八ッ場)ダムが不要と言い切ってる論客は,視野が狭いとしか言いようがない.
また,早く首都圏の環状道路を完成させて通過交通を排除する必要があることは同意.つくばから都心に向かう道路が平日昼間にはどのルートでも渋滞することがいい例で,「なんでこんなことが対策されないんだろう」と(TXが開通する前は)常にイライラしていた.高速バス乗りながら,この渋滞の損失を金銭換算していたこともある.
でも,じゃあ,なぜパーク・アンド・ライド(環状道路のインター近くにモータープールを設けて都心に入る自家用車を排除し,LRTなどに乗り換える)が現実に導入されないんだろう.本当に「予算の欠乏」「長期的視野の欠如」で片付けられるのか?こういう新書などで国民に地道に訴えていけば,いつか実現することなのだろうか?ちょっとそのへんの処方箋があればなあ.
大きな事業は,超トップダウンの為政者に先見の明があって,皆疑問を持っても黙って従って,あとから「やっぱりあのときやっといてよかったなあ」ってならないとダメなんじゃ?と最近思う.藤井先生に”超トップダウンの為政者”になってほしいなあ(某委員会でご一緒した印象では,ご本人は至ってソフトなお人柄であられますが).
(オマケ)日本は破綻しない,その理由は日本が外貨で借金しているわけではないからということ.これも納得した.うちの親が,結構な金額の復興債(国債)を買ったという(確実で定期預金より少しだけ利率が良いからだって)ことを聞いたばかりだったしww.典型的な高齢者の消費パターンで笑った.そんなお金あるなら私とうちの子たちのために使ってよ!とは言いませんでした,大人ですから.