Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

PERFECT DAYS

ヴィム・ヴェンダース=監督、2023年日本、ドイツ合作
役所広司柄本時生田中泯、中野有紗、アオイヤマダ、石川さゆり三浦友和長井短甲本雅裕
キャストが豪華。
今のところ2024年のマイベスト。
キーワードはKOMOREBI(こもれび)、ヴィム・ヴェンダースっぽい妄想シーンが時折挿入されるのが、「ベルリン天使の詩」を想起させる。
役所広司が、ひたすらずっと見ていられる。自転車をこぐ姿。押上から浅草のいつもの店に行くために橋を渡る姿がなんとも絵になる。
勿論、トイレ掃除の姿も、尊い。ウォッシュレットってこうやってメンテナンスするんか、とこの映画で初めて知った。渋谷区の公衆トイレのツアー映像としても超一級の作品。
役所広司は「平山」という役名で、これは小津の「東京物語」の主人公「平山周吉」から。さもヴェンダースが好きそう。そういう目で見ると、画が小津なんだよね。カメラの動かなさ具合が。
小津的なカメラも成功しているのかもしれない。東京の緑が、こもれびがこんなに素敵に撮られるなんて。
「平山」は小料理屋の女将が、彼女の元夫と一緒にいるのを見てしまいそれはそれは動揺するのだが、そこで、タバコ(PEACE)吸ってむせるのが良い。一緒にいる三浦友和も良いが。
柄本時生が演じる、調子のよい若者は、すぐに「10のうちの9」などと出来事や人をランキングするので、思わず笑ってしまった。
個人的に大好きだったのは古本屋の店主(犬山イヌコ)のセリフ。幸田文については「もっと評価されてもいいのにね」とやたらと含蓄が深い。パトリシア・ハイスミスの「11の物語」という本をてにしながら、「パトリシア・ハイスミスは不安を描く天才。恐怖と不安は別物だって彼女から教わったわ」。ひー、凄いセリフである。
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記者会見の動画も全部見てしまった。柄本家の会話で、柄本時生が「今度、役所広司さんと共演することになった」と父(明)に話したら、「役所は上手いぞ~」って明が時生に言ったっていうエピソードが良い。