Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

青いカフタンの仕立て屋

マリヤム・トゥザニ=監督、 2022年フランス・モロッコ・ベルギー・デンマーク
ルブナ・アザバル

海沿いの街サレの路地裏で、母から娘へと受け継がれるカフタンドレスの仕立て屋を営む夫婦ハリムとミナ。ハリムは伝統を守る仕事を愛しながらも、自分自身は伝統からはじかれた存在であることに苦悩していた。ミナはそんな夫を理解し支え続けてきたが、病に侵され余命わずかとなってしまう。そんな彼らの前にユーセフという若い職人が現れ、3人は青いカフタン作りを通じて絆を深めていく。ミナの死期が迫る中、夫婦はある決断をする。

ロッコ・サレという街の、普段の様子が興味深く描かれる。トゥザニ監督の前作はパン屋だったが、今度は仕立て屋!!布の種類、飾りボタンの種類に目を奪われる。公衆浴場(ハマム)での湯気の中の垢すりのシーンとか、官能的すぎて「ブエノスアイレス」っぽい映像で、ものすごくドキドキ。ただし、耽美的な映画かと思ったら大違い。これは社会派ですね。イスラム世界の同性愛者がどのように生きているか、知らない世界を垣間見た。
カフェに夫婦で行くシーンも、他の客は全員男性だったのであれっと思った。ミントティー美味しそうだったね。妻がタバコを吸うんだが、イスラム世界では結構珍しいのでは?妻は元ダンサーなのか、昔はかなりの美人だったという設定よね。
主演のルブナ・アザバルさんは前作「モロッコ、彼女たちの朝」でも主演だった方だが、今回は病床にある妻という設定なのでダイエットしてこの役に臨んだという。初めは気が付かなくて「この感じ、どこかで・・・」と思って途中で気が付いた。眼の光が同じだったから。
刺繍の金糸の作り方、刺繍の手仕事、布の裁ち方や最後の仕上げなど、カフタンづくりを細かく見せてくれた。テーマの他に製作工程を見せてくれるのは「きのうなに食べた?」方式ですね。「きのう~」の場合は料理ですが。