Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

さらば冬のかもめ

ハル・アシュビー=監督、1973年米国
ジャック・ニコルソンランディ・クエイド、オーティス・ヤング

海軍士官バダスキーとマルホールは、窃盗で8年の刑を宣告された若い水兵メドウズの護送任務に着く。旅をするうち、3人の間には奇妙な友情が芽生えていく。バダスキーとマルホールはまだ女性との経験がないというメドウズのために売春婦をあてがってやる。一方、メドウズは途中で出会った娘から脱走を勧められるが……。3人の男たちの交流を描いたアメリカン・ニューシネマの佳作。(映画.comより引用)

原題はThe last detail。直訳すると「最後の任務」なのに、さらば冬のかもめ、とは!!かもめの水兵さんから来ているらしいが、この邦題ホントよい。
detailを辞書で引くと、「(米軍用語で)特殊任務」なるほど。
アメリカンニューシネマのざらついた質感の映像。もう、この時点で鼻血が出そうなくらい好き。そして素敵なロードムービーになっていた。
まず、ニコルソン演じるバダスキー。超のつく変人。ニコルソン自体も怪優だけど。バダスキーという苗字が、仲間にどう思われているかを自虐的に話すシーンにまず大ウケしてしまった「Badaski, Bad ass(悪いケツ)」。
たった40ドルを盗んだ廉(かど)で(しかも未遂なのに)囚人となってしまった二十歳くらいの若い水兵。彼をノーフォークの海軍基地からポーツマスの刑務所へ送り届けるようにと、上官から言われるバダスキーとマルホールのシーンから始まる。これは一般には「美味しい」任務。でも、ただ行くだけではつまらないと寄り道しよう、とバダスキー。冒頭から変人感が醸し出されている(これが面白いんだ)。
鉄道がよい。Nofork - Richmond - New Yorkを走る、Carolinian/Piedmont線に三人は乗ったようだ。現在はこの線は休止か廃止になっているかもしれない。私、Durham, NCに行ったときに、走るのを見た気がする。その先、NY - Boston - Portsmouthと行く長い旅。Amtrakの車内風景をまじまじと見られて、興味深かった。どんな人が乗っているのか、とね。
Bostonで奇行に走る三人組や酒屋で突然キレるニコルソン。日本の新興宗教日蓮宗系?)の集会所に紛れ込んだりとか、娼婦の館とか、凄い風景が次々出てくる。アメリカに観光で行っても、いや、住んでいても絶対に出会えない映像がてんこ盛り。
何気に好きなのは、バダスキーが「チーズの溶けたハンバーガーが好きなら、ちゃんと、『温めてください』って言うんだ」と妙に熱くなっていたこと。
Portsmouthがまた、寒そうのなんのって。寒くて手を震わせながら缶ビールを飲むの良かった(そんなに飲みたいんですかwww)。
最後の最後で脱走する若い囚人。しかし、バダスキーたちは、やたらと目端が利くというか、脱走兵を決して逃がさない俊敏さとスキルがあるのだ(意外にも、ね。だからこういう任務に選ばれているのだが)。そういう、何気ない小さな日常が、沁みてくるのだった。
この映画は、又吉直樹さんがとても好きと言っててチェックしていたのだけど、良いもの観たなぁ。