Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

リトル・ダンサー

ティーブン・ダルドリー=監督、2000年英国(BBC
ボクシングを習っていた少年ビリーが、偶然眼にしたバレエレッスンがきっかけで、バレエ・ダンサーになることを夢見て頑張る話。その家族(父親)の不器用な生き様と共に温かく描く。
英国&80年代といえば炭鉱閉鎖+ストライキの嵐という定番ネタ。分かりやすかった。「フル・モンティ」に似ているんだけど、その少年版というテイストである。崖っぷち、でも何かやってやる、がむしゃらにやる、ハッピーエンド、しかし泣ける。という流れ。「フル・モンティ」では鉄鋼不況という違いはあるが、失業して、尊厳失って、でも熱く温かい。
英国の炭鉱モノ(と敢えて書くが)が物悲しいのは、産業革命の末裔だからというか、炭鉱はどう考えても近代遺構だからなのよね。イノベーションとは無縁の閉塞感をまといながら、必死にしがみついていて、にもかかわらず「この先、希望はない。」(父親のセリフ)だからね。
だから「ダンサーになるビリーに賭けようじゃないか」となるわけだ。男のプライドの塊である炭鉱・ボクシングを否定し、バレエ(という女の象徴のようなもの)にリソースを費やすには、かなりの発想転換が必要で、だからこそ「フル・モンティ」で男たちがストリッパーになったような、はっちゃけたエネルギーが必要なんだよなあ。
・・・ということを思いながら観る。父親は炭鉱労組のトップで、ストには率先して参加しなければならないのに、息子のオーディション費用を稼ぐために働いちゃうんだよねぇ。泣ける。また、基本、炭鉱男たちは血の気は多いものの、いい人が多くほっこりする。バレエの女教師はロシアからの移民かな?英語がメッチャクチャ訛っていて全然わからなかった。この人、レッスン中終始タバコ吸っていて、ツッコミ入れまくったよ(ロシア人、ってのは私の勝手なイメージ)。こんな点はコメディ。
ビリーの踊りもgood。バレエは下手(という設定)だったが、ジャズダンスやタップダンスがうまかった。亡くなった母親がフレッド・アステア大好きで、という設定も泣ける。アステア、カッコイイよね。
イングランド北部のDurhamという町が舞台で、これは「ダーラム」と読む。読めないだろ!こういう、シェークスピアか!な綴りもイギリスが感じられて好感度高い。
追記:そういえば、20年近く前に「ブラス!」観た。これもテーマが、英国&炭鉱だったね。