Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

ウェディング・バンケット

李安=監督,1993年台湾・米国合作
これは面白かった.同じ監督の「恋人たちの食卓」より更に面白かった,そして泣いた.家族とは何なのか深く考えさせられる,ドラマチックな小津映画.
ニューヨークで暮らしているゲイの台湾人青年(実業家)が,両親を安心させるため偽装結婚する.「花嫁」となる女性は米国永住権を得られるから,という理由でこちらも偽装にあっさり同意.両親にウソじゃないことを証明するために簡素な式をあげ,すぐに別れるつもりだった.ところが青年の両親が台北からやってきて青年のアパートに短期滞在,奇妙な共同生活となる.青年と同居している恋人(←もちろん男性,念のため)は気が気じゃないし,「花嫁」も青年の両親からやたら気に入られる.そして予想だにしなかったアクシデント・・・
こう書くとコメディのようだが,中華系の家族のあり方というか底力をまざまざと見せつけられて,日本人の私は何故か敗北感.
青年の父親がいい味出していて深い.父親は何も知らないふり,わかってないふりをして,実は一番わかっているという,家族を思う気持ちがずんと来た.さすが父親三部作のひとつだわ〜.
この監督は食卓を囲むシーンが好きなのか,今回もたっぷりと見せてくれる.アパートで料理をつくるシーンも何回も出てくるし,タイトルにあるウェディング・バンケットのシーンも料理がきちんと写されている.婚礼料理の海老とかねぇ,よだれ垂れる.
NY市での結婚があまりに簡素なのに対して,中華式の結婚式の派手なこと騒ぐこと.このギャップだけでもめちゃ興味深い.花嫁に蓮の実のスープを飲ませると男の子を授かる,という言い伝えとか,ほほぅなエピソードが満載.セクハラだろ?とツッコミを入れたくなる披露宴の余興もたっぷり.